第24話 ページ26
結局、福沢諭吉は1人、いなくなってしまった。
若干の損を覚えるも、あの状況で踵を返しても余計に目立つだけだ。
損得はなるべく考えず、足を進める。
私の中には、二種類の名刺が収まっていた。
『万事屋 銀ちゃん-何でも仕事承ります-』
『忍者 服部-家事、育児、雑用、アルバイト、何でもします』
裏を見ると、それぞれの電話番号が記されている。
金は無くても名刺はあるのかと言いたくなったが、延々と詫びられるのよりはマシだ。
簡素極まりない名刺をしまいながら、諭吉を出した瞬間の2人の顔を思い出す。
この世の終わりのような顔だった。
自身よりも金を持っていたということがそれ程までにショックだったのだろうか。
男特有のプライドというものは、幾ら相手をしても理解しがたい。
私に土下座をした時点でプライドも何もないだろうに。
そう思いながら、私はブラブラとアテもなく歩く。
だが、粘りつくような暑さの中、私は不意に気づいた。
『―――君にとっては久しい、太陽の下だ』
私は彼の名前を、未だに知らなかった。
◇
吉原と地上の雰囲気は、まるで違う。
何百年かの歳月の違いを、私は感じていた。
『文明の進歩なんて、お前らにゃ関係ねーんだよ』
幼い頃の記憶がよみがえる。
心を持たぬ肉人形に私達を育てる為、彼は口々にそう叫んだ事を私は覚えていた。
その頃は私が遊女として買われるなど思っても見なかったが。
ところで、私は一体いくらで買われたのだろうか。
無駄な疑問だけが頭の中を占めていたのだが―――。
轟音が、前触れもなく鼓膜をつんざいた。
ドゴオオオオオオオオオオンッ
「――――ッ!?」
反射的に身を強張らせる。
痛む鼓膜に構っていて、気づかなかった。
―――ふわり、と。
―――――体が、浮いた。
「―――――はッ!?」
「待てゴラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」
「桂あああああああああああああああああああああああああッ」
「なッ、なッ、何…ッ?」
思考回路がやっと追いつく。
地につかない足が、分からせてくれた。
「スマン、通りすがりの女!少し人質になってもらうぞ!」
「はあああああッ!?」
見知らぬ男に、私は横抱きにされていることに。
長い黒髪が翻る。
着物が翻る。
彼は駆け、駆け、駆け抜ける。
意味が分からなかった。
いつの間にか、私は桂と呼ばれる男に横抱きにされ―――。
後方にいる黒服の団体と一緒に追い掛け回されている
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革ベルト
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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
英 - 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時