第19話 ページ21
「―――――・・・・・ッ!?」
体の硬直が解かれる。均衡は崩れ、私は後ろに飛び退いた。
尻を正面から打ち付ける。痛みが走ったが、今はそんな事、心底どうでもいい。
『さっさと子を孕んで、死んじまいな』
彼女の吐き捨てた言葉が脳裏に反響した。
1番古株な彼女は。鷹の目のような目つきをしていた彼女は。私を見下しきっていた彼女は。
――――死んでいた。
私の目の前で、彼女の亡骸は紐に吊るされている。
「・・・ッひ、ぁ・・・うひゃあああああああああああああああああああッ!」
甲高い悲鳴が、後方から轟いた。振り返ると遊女が1人、腰を抜かしている。
彼女は目を見開き、震えていた。糸が切れたように絶叫し、ただただ体を痙攣させる。
そして、不意に体をうずくまらせる。
背中がビクビクを発作を起こしたように揺れ、水音が辺りに響き渡る。
彼女は、嘔吐していた。
濁った黄色の、粘性のある液体は四方八方に広がっていく。
―――ぬちゃり
嫌な水音がした。
ここに居なくない。
本能的にそう思う。
「おいッ、何ださっきの悲鳴―――って、うおわッ!?くっせぇッ!」
「・・・まじかよ・・・おい、上に知らせろ。まずは死体を下ろせ。ゼッテェ客に見せんなよ!」
「わぁってらぁッ!・・・おい、関係のねぇ奴は仕事に戻れ!グズグズすんな、運べッ!」
男衆が集まってくる。
雑音が耳を満たし、爆発でもしそうだった。
頭が、痛い。
「―――おいッ、テメーもさっさと仕事に戻れッ、何や・・・・って――――」
肩を�拙まれ、乱暴に引かれる。男衆の顔を見上げると、何故か彼は硬直した。
不思議に思い、思わず彼の目を凝視してしまう。
そして、私は彼は硬直した理由を理解する。
――――ああ、なるほど。
――――確かにこの状況には、そぐわない。
男衆の小さい、黒い瞳。
瞳の周囲は虹彩に囲まれ、眼房水に濡れている。
そして、その瞳に映った私の顔は―――。
―――まるで、この状況を楽しんでいるかのように。
―――安らかな、笑みを浮かべていた。
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飴崎 - ルーンさん» ありがとうございます〜。現状維持できるように頑張ります! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - 英さん» ありがとうございます!今すぐ取り掛からせていただきますね! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
飴崎 - バトラッシュさん» 頑張らせていただきます!読んでくださって本当にありがとうございます! (2015年2月7日 18時) (レス) id: 69cad8d3b5 (このIDを非表示/違反報告)
ルーン - とても面白いです!続編楽しみに待ってます! (2015年1月22日 2時) (レス) id: 04550145ac (このIDを非表示/違反報告)
英 - 面白かったです!続編楽しみに待っています! (2015年1月21日 7時) (レス) id: b6fd32bf94 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:飴崎 | 作成日時:2012年8月6日 14時