恋色絵の具《渡親治》

1枚目 ページ3

「最近、渡がおかしい」


そんな事を言い出したのは、多分まっつんだったと思う。


「急にどうしたの」
「最近、渡がおかしい」
「それは聞いた」
「俺のクラスでもずーっとこんなん」
「マジで」

まっつんがこんなにうだうだするのは珍しい。
一体どうしたんだろう。

「あのさ、最近渡怪我したじゃん」
「左足首ひねったやつな」
「靭帯損傷したんだっけ」
「それが？」
「そこらへんから、渡が生き生きしてる気がするんだよな」

何を、と思った。

怪我をした時、渡はとても悔しそうだった。だってしばらくは練習に参加してはいけなくなったし、そもそも足首も凄く痛かっただろう。
とても、悔しそうで、悲しそうだった。

「けど、病院行く時、あいつちょっと嬉しそうじゃない？」
「それは俺も思った」
「え、岩ちゃんも？」
「あぁ。なんつーか、楽しみにしてる…みたいな」

どういう事だろう、と首を傾げてしまう。

最近渡は部活を休んでる。リハビリに専念する為に、放課後すぐに病院に向かっているからだ。
病院自体はうちの高校のすぐ近くだから、歩くのにも支障はないし。

「…けど、何で嬉しそうなんだ？」
「さぁ」
「…まさか、これを気にバレーやめるとか」
「演技でもない事言わないでマッキー！」
「けど、本当に何でだ？」



「もしかして、好きな子が出来たとか？」


軽口のつもりで言った、その言葉。





実は、当たってたりするのだ。

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