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プロローグ-二 ページ2
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『ジブリール……』
相変わらず音のないまま、言葉だけが認識される。その言葉は、わずかだが揺れている気がした。
不意に抱擁が解かれた。だが、喋れるようになった口を開いた瞬間、声を出すことも許さず封じられる。
(何故?)
塞いだのは、相手の唇で。
(どうして)
しばらくして、唇が離れ、その人は真っ直ぐにわたしを見つめた。
『――愛しているよ、✕✕✕』
その言葉だけが、音を持っていた。やはり、わたしはその声を知っている。
反応する間もなく再び唇が重なった。角度を変えて、わたしの唇を割り侵入してくる舌の感触にぞくりと肩が跳ねる。それを抑えて舌が絡め取られる。訳が分からないのに抵抗する気は起きなくて、深いキスに体が溶けていくような感覚に思わず目を閉じた時、突然世界が回るような体感を覚えた。
『わたしは――』
最後に呟いた言葉はなんだっただろうか。
目の前にあるのは板張りの天井で、体は酷く重かった。
鼻腔に届く優しい香りとこちらを覗き込む青色の瞳。
ここは、どこだ。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 19時