#12 吹き飛ばされる王冠 ページ48
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「出来たぞ」
プライドの高さが全面に出た声で、エイスは言った。
その声にユウが目を遣ると、テーブルの上には皿が置かれていた。その上には、甘い香りと湯気を放つ、輪切りになった赤い果実。
「食べろ」
エイスの言葉に、ユウは訳が分からぬという表情で彼を見た。どういう風の吹き回しだ。裏切り者で、粛清されてもおかしくない自分に、なんの用があるというのか。
そんな彼の気持ちを聡く理解して、ゼフィラが首を横に振った。
「例の『ワクチン』です。現在では必要のなかった分、手に入れるには相応の手間がかかりましたが……。正真正銘、貴方のお母様がお作りになったものです」
ゼフィラの言葉に、ユウは驚く。
目の前にあるこれは、焼き林檎だ。――ユウが好んで食べるおやつの。
フン、とエイスが鼻を鳴らした。
「これくらい、アーク家の家督たるオレに作れぬ道理はないだろう。オレをなんだと思っているんだ」
「……エイスが、これを？」
意外で――本当に意外で、ユウはそう呟いた。
「手に入れるのにレガリア様の力は借りたがな」
じわ、と再び、ユウの目に涙が浮かんだ。
裏切り者と粛清されても当たり前だと思っていた。理由はどうあれ、『アイリヴ』と共に居て、その人形のような存在。だというのに、二人は天帝レガリアの力を借りてまでこれを手に入れてくれたのだ。
確かに天帝の権力は強いが、それ以上に二人のプライドは高い。エイスはとりわけだ。
だから、まさか二人がそんなことをしてくれるとは思わなかったのだ。
「どうしたのですか？」
ゼフィラの声に、我に返る。慌てて上半身を起こそうとして、再び走った痛みにユウは呻いた。
「――ぐ、」
「起きるのも辛いのですか」
「だいじょ、ぶ……」
誤魔化して返事をすると、エイスが怒鳴った。
「馬鹿野郎、ソウならソウと言え！ そういう所がオマエはダメなんだ！」
言うなり、エイスは林檎を一口大に切り始める。そこまでしてもらう訳にはいかないと起き上がるユウに、エイスは再度怒鳴る。
「五月蝿い、大人しくしていろ！」
同時に、ゼフィラがそっとユウの肩を押した。
「ご無理はなさらずに。彼は大分、やりたい放題のようですから」
「あ……」
泣きそうになる。知られたくなかったが、それでも二人は知っているのだ。
本当は、自分のことを
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作者名：ゼファー | 作成日時：2021年1月14日 13時
