無計画なる放浪者 part3 ページ35
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いや、恋愛自体は、異性相手であっても苦手であるが。
目の前にすると緊張してしまって、何を話せばいいかわからない。一生懸命なのはわかるし、傷つけたくない。しかし、自分にその気がないのに期待を持たせるような態度はよくないと思うのだ。
――お子様だねぇ。
シンにはよく、からかわれていた。
女顔とか言われる容姿のためか、言い寄ってくる男もいた。男としては悲しい限りだが、襲われることも日常茶飯事だった。容赦がないと言われるが、当たり前だ。初めて襲われかけた時、手加減をしたら気絶したフリをした相手に背後から羽交い締めにされた。下手に暴力を振るわれるより恐ろしかったし、悪寒が止まらなかった。
だいたい人をなんだと思っているのか。ふざけるな。
アイリにだって、本当は悩まなかった訳では無い。しかし彼は命の恩人で、ユウにはほかにあげられるものはなかった。天界から人間界におりるのには煩雑な手続きが必要だし、何より周りに心配される。せっかく助けてくれた青年に、不確実な約束などできるはずもない。
それに、アイリの悲しそうな瞳に絆されていないといったら嘘になる。無理矢理襲ってくる連中は全て叩きのめしていたのに、何故だかあの時だけ頷いてしまったのだ。
ユウは、『アイリヴ』の顔を知らない。忌むべきものとして消されていたし、周囲が気を遣うだろうから尋ねることも出来なかった。調べることも、何か後ろめたい気がしていた。
それらが全て裏目に出て――今、このような状態になっている。
完全に、ユウの落ち度だった。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時