【オリジナル/BL】悪魔の翼 (ページ28)

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奇妙な帽子 part4 ページ28

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　そんな中に流れてきた、ユウが魔界に行くという噂に、アイリは慌ててその機構を復活させたのである。
　噂通り、ユウは強かった。並み居る悪魔を斬り捨てて、焼き払って、彼は仲間を守るために戦っていた。それがアイリには不安だった。一人でもと犠牲を減らす戦いは、ユウの身体を幾度となく傷つけた。殺されかけている仲間のために身を投げだすことも頻繁にあった。それでも彼は苦しげな顔をするでもなく、苦痛を押し殺し仲間を気遣っていた。
　そしてある時――とうとう、彼は陥れられた。ユウの戦い方を見ていれば、作戦など容易に思いつく。実に簡単な事だ。
　悪魔達は一人の天使に狙いを定め、ユウから遠く離れたところで悲鳴をあげさせた。ユウはその策略にあっさりと引っかかった。いや、それが罠だと彼も気づいていたのかもしれない。しかし、彼の性質が見捨てることを許さなかったのだろう。
　傷ついたユウの苦しげな息づかいは、声は、普段と違っていた。気がつけば、アイリは動いてしまった。
　その先のことは、あまり覚えていない。我に返った時には、寄って集って嬲り殺しにされていたユウを抱き、家に連れてきていた。
　ユウの負傷は、アイリから見ても酷いものだった。
　――『ジブリール』にとっては守るための戦でも、悪魔達にとって彼は同胞を殺した仇だ。だから、こうして死にかけているのも戦争なんかに参加したユウの自業自得。
　頭の中で冷静な自分が囁くのを聞きながら、アイリは必死に治療した。一部の傷が非常に深く、このレベルの傷を塞げるのは回復に特化した天使しかいないだろう。しかしアイリヴは熾天使(ウリエル)であるが、もう一つの側面も持っていた。
　医療に精通し、癒す者である大天使(サリエル)。こちらが本当の名であったともいえる。
　アイリは傷を塞ぐと、自分の羽根を躊躇いもなく引きちぎった。かつての仲間たちはアイリヴがあまりにも平然と羽根を引きちぎるものだから、痛みなどないと思っていたかもしれない。再生力が強く、翼を折られようともすぐに回復する。だが、痛いものは痛い。羽根を引きちぎる度に凄まじい痛みが走る。

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