終焉を知らせるもの part3 ページ5
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「どーかしたの？」
「うん……」
とても言いづらかった。傷が癒えたから、天界に帰らなければならないとは。
魔界との戦はまだ終わらない。戦わなければ、守らなければ誰かが死ぬのだ。
このアイリという女性との暮らしは心地よかったが、いつまでもここにいる訳には行かない。
「あのね……」
「帰っちゃうの？」
言い淀むユウより先に、真っ直ぐにアイリが問うた。
あまりに純粋なその瞳を直視出来ず、ユウは俯いたまま頷いた。
「……うん。世話になるだけなっておいて、本当に申し訳ないんだけど。仲間が、待ってるから」
アイリは何も言わない。その沈黙があまりにも苦しくて、ユウは顔を上げると、アイリは悲しそうな目でこちらを見ていた。彼女の反応を見ていると、自分がひどいことをしているかのように思えて、少しだけ胸が痛んだ。
ややあって、アイリが口を開いた。
「……仕方がないよ。キミにだって、事情があるからさ」
その声は震えていて、自分のした事だと言うのに哀れに思えてくる。
「本当に、ごめん」
ふっとアイリが立ち上がって、同じく立ち上がっていたユウの胸板に額を押し付けてきた。甘える猫のようなその動作に、今度はユウが「どうしたの？」と訊いた。
「キミが辛いだろうから、ワタシは引き止めるつもりはないよ。――でも、一つだけ、お願いを聞いてもらってもいいかな」
「うん、いいよ」
ユウは優しく笑った。
「一緒にいたいんだ」
躊躇いがちに発された言葉。今夜だけ。一晩だけでいいから。そう言ったアイリに、ユウは頷いた。
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二話 純白の翼 part1→←終焉を知らせるもの part2
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作者名：ゼファー | 作成日時：2021年1月14日 13時
