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#7 奇妙な帽子 part1 ページ25
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ぽつりと彼はいった。
「ボクは多分、もうすぐ死ぬよ」
天使達の思うがままに作られて、搾取されて、悲鳴を上げている心と体。あまりにも痛々しい、その微笑み。
わたしと一緒に逃げよう、と誘う、ともすれば懇願とさえ思える言葉にも彼は首を振った。
だからさ、と前置きして彼は言った。
「最後にアーネにはお礼を言いたいんだ」
そんなこと言わないで、いなくならないで。誰もあなたを愛さないというのなら、わたしがあなたを愛しているし、何度だって言うから。
もっと幸せそうに笑うあなたを見せて。わたしにあなたを笑顔にさせて。
それが叶わないというのは、私にも分かっている。
それでも願わずには居られなかった。来年の秋も、花壇に咲いたカミツレを見ながら笑い合いたかった。
わたしは彼を抱きしめて、呼ぶ。
「アイリ」
たとえ彼が、わたしの愛したこの世界を憎んでいるのだとしても。
「その時は、わたしが殺してあげます」
この世界と共に死のうとしているとしても。
「愛しています」
わたしが愛したのは、あなたでした。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時