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___次の瞬間、2人の姿はピッチ上から掻き消えていた。
ギィン、と耳障りな金属音が響いた後、衝撃波がざあっと辺りを震わす。
両者ともに譲らぬその攻防。
しかしAはある事に気付いた、気付いてしまった。
「(術式が・・・なんで?
勝手に、消えてく・・・・・・)」
氷の様な呪力を発し続け、触れるものを凍らせてしまう氷月。Aはそれに対抗して刀に炎を纏わせようとして、失敗した。
ほんの一瞬だけ刀の鍔から生成した炎が吹き出して、消えてしまったのだ。
「(・・・まさか)」
___最悪に重なった最悪。
Aは悟った。
この呪霊の術式は、術式の強制解除、だ。
マズイ。これでは空間の切断で絵心達を護ることが出来なくなってしまう。Aは咄嗟に氷月から離れた。
どうする、どうすればいい?
はっ、と口から白い息が零れた。絵心達の到着は今からそう遠くない未来だ。
だん、とピッチの後方に着地したAは刀を構え直す暇もなく、氷月の追撃をもろに受けてしまった。
鋭い痛みが体を襲う。冷気を纏った刀で斬られるのは、想像以上に痛みが強かった。
しかしそれが、ぐちゃぐちゃになった頭をリセットさせてくれる。
「(・・・そうだ、それなら空中戦に持ち込めばいい・・・。帳のせいで高さ制限はあるけど、氷月の術式が術式の強制解除だとすれば遠距離攻撃はそう簡単に出来ないはず・・・。
それに、術式の解除は
ここまでの思考は、氷月が再び攻撃を繰り出すよりも速く完結したものだった。Aはその攻撃をすんでの所で刀を使って受ける。そして氷月を力任せに吹っ飛ばすと、自分も高く飛び上がって宙へと浮き上がった。
「んー、空中戦をお望みかな?ボクの術式の弱点もちゃんと見破ってるみたいだね〜!」
氷月はにっこり笑って、呪力を使って足場を生成し、それを強く蹴ると再び刀を振るった。
「(きっと、氷月の術式解除は呪具にも適用される・・・。呪具にはあんまり頼んない方が得策かもな)」
先程受けた傷を癒しつつ、Aはその瞳に氷月の姿を映す。
生きるか死ぬかの極限状態の中研ぎ澄まされた視覚は、氷月の動きをコマ送りの映像のようにひどくゆっくりと映し出した。
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raiz(プロフ) - 神里浦飛さん» わー、そう言って頂けて嬉しいです!!こちらこそありがとうございました! (3月31日 17時) (レス) id: 9fe4c24c21 (このIDを非表示/違反報告)
神里浦飛(プロフ) - 面白くて一気読みしました!最後まで読んだ、と思ったら、番外編の千切りに爆笑させられました。楽しい時間をありがとうございます! (12月7日 20時) (レス) @page49 id: fb6d1b08bc (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - れんれんさん» 返信遅くなり申し訳ありません、コメントありがとうございます!最後に面白かったと言って貰えるよう頑張っていたのでその言葉が沁みます・・・(*´꒳`*) (2023年4月14日 21時) (レス) id: 83866824e4 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - リィさん» コメントありがとうございます!ここまで読んで頂き感謝しかないです・・・!!返信遅くなって申し訳ない・・・。 (2023年4月14日 21時) (レス) id: 83866824e4 (このIDを非表示/違反報告)
れんれん - 完結おめでとうございます!ほんとに面白かったです(*^ω^*)番外編待ってます!!! (2023年4月9日 15時) (レス) @page45 id: 63496a6874 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:raiz | 作成日時:2023年3月25日 23時