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無理は、何よりも危険。それはAが痛感している事だ。大丈夫だと、そう言って無理して笑う人間を、Aは一度救えなかったのだ。
「・・・俺は、負けた。でも、だから。もっと強くならないといけないんだ」
そう言う國神の目元には既にクマが出来ているし、瞳には以前の輝きが失われつつあった。
あぁ、あの時と同じだ・・・なんてAは眉を下げる。
Aには人間の異常がすぐに分かる。それはあの時でも変わらなかった。・・・しかし、救えなければ意味が無いのだ。もしもAがあの時声をかけていれば、隣にただ座って話せていれば。未来は変わっていたかもしれなかった。
そんな後悔を乗せて紡いだのが冒頭の言葉だった。しかし國神はまだ続けていたいらしい。そう思うのも当たり前だろうか、己のサッカー人生がかかっているのだ。
Aはふぅっと息を吐く。ここで休みを強要してしまうのもあまり良くない。
「・・・。なんか身体に異常があったらすぐ言うこと!あと適度に休憩を摂ること!
分かってるとは思うけど、無理なトレーニングは身体に悪影響だからね。」
どんっと両手に握ったボトルを机に置いて、Aはそう言い放った。
國神はこくりと頷くと、またトレーニングを再開しだす。
「(んー、マジで無理は良くないけど・・・。トレーニングに関しては國神もしっかり知識は持ってるだろうし、私がとやかく言うモノでもないのかもな。本当にマズそうだったら、強制的に休み取らせよう、うん。)」
Aはそこまで考えて出た答えに納得し、ひとりうんうんと頷いた。
先程辿った長い道を再び辿り、三次選考一次ノルマを達成したチームの部屋へ歩を進める。途中で掃除用具を取りに行ってから入った部屋では、ワイワイと英語の勉強会が開かれているようだった。
「英語の勉強?」
Aが声をかけると、5人はそれぞれ別の反応を見せる。
「おっ、Aじゃん!」
「わー、一日ぶり?お久〜!」
「む、オシャ少女」
「Aさん!」
「何しに来た」
一人だけ愛想がかなり悪いが、Aはその疑問にけろりとした表情で「掃除」と答えた。すると潔が「あ、掃除機使ってくれても大丈夫だからな!」と言ってくれる。集中を切らせないように今回も箒で掃除をしようかと考えていたAには助かる話である。
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raiz(プロフ) - 神里浦飛さん» わー、そう言って頂けて嬉しいです!!こちらこそありがとうございました! (3月31日 17時) (レス) id: 9fe4c24c21 (このIDを非表示/違反報告)
神里浦飛(プロフ) - 面白くて一気読みしました!最後まで読んだ、と思ったら、番外編の千切りに爆笑させられました。楽しい時間をありがとうございます! (12月7日 20時) (レス) @page49 id: fb6d1b08bc (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - れんれんさん» 返信遅くなり申し訳ありません、コメントありがとうございます!最後に面白かったと言って貰えるよう頑張っていたのでその言葉が沁みます・・・(*´꒳`*) (2023年4月14日 21時) (レス) id: 83866824e4 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - リィさん» コメントありがとうございます!ここまで読んで頂き感謝しかないです・・・!!返信遅くなって申し訳ない・・・。 (2023年4月14日 21時) (レス) id: 83866824e4 (このIDを非表示/違反報告)
れんれん - 完結おめでとうございます!ほんとに面白かったです(*^ω^*)番外編待ってます!!! (2023年4月9日 15時) (レス) @page45 id: 63496a6874 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:raiz | 作成日時:2023年3月25日 23時