98. ページ48
.
青筋を浮かべた馬狼の言葉をガン無視したAは、グイグイとその手にタオルを押し付ける。
「まあまあ持っていきなさい。」
「お前は子供に野菜を押し付ける近所のババアか」
「Aー、俺もタオルいるー。」
「ほーい。」
Aは凪にもタオルを渡すと、3人にヒラリと手を振ってまた歩き出した。
・・・御影と凪の2人には、その関係を大事にしてもらいたいものである。
___若人から青春を取り上げるなんて許されていないんだよ。何人たりともね。
Aはいつの日か五条が口にしていた言葉を思い出し、それに秘められた真意をそっと噛み締める。
そして、また違うグループへタオルを配り始めた。
_________
___
_
ひゅう、と風が耳の横を通り過ぎる。とある少女は特徴的な群青の髪を靡かせ、上空にて静止していた。
その少女のサファイアを其の儘はめ込んだような美しい瞳は、少女よりもずっと下に聳え立っている五角形の建物を見据えている。
「へェ、随分と強い結界だ。これで湧く呪霊を最小限に留めているのかな?
流石は君程の呪霊が認めた術師って感じだね、鬼神?」
ポツリと小さく囁かれた言葉に返す者は居ない。しかし、少女は脳内に流れ出す低い声にクスリと笑った。
___ああ、未だ発展途上の様だがあれは面白い。・・・しかし、何か刺激が無ければ彼奴の力も滾らぬだろうな。
「うん、うん。分かったよ。僕があのコを襲いに行けばいいんだね?」
また、少女が行き場のない言葉を吐く。少女の中の「鬼神」は再度言葉を紡いだ。
___そうだ。もしお前とぶつかっても何も起こらかったならその時は、
「殺せ。・・・ってことでしょ?分かってるよ。・・・楽しみだな、その時になったらちゃんと伝えてね。」
___あぁ。・・・お前に限ってそんな事は無いと踏んでいるが、しくじるなよ?氷月。
氷月。そう呼ばれた少女はにっこりと笑みを浮かべ、「やだなぁ、僕をなんだと思ってるの?」とくつくつ喉を鳴らした。
氷月が己の首に巻かれたマフラーをくいっと引っ張ると、そのマフラーはたちまち凍てついてしまう。
「いっけね、呪力漏れてた・・・。」
氷月は慌ててマフラーから手を離し、漏れ出す呪力を調節する。
「さて、さて・・・。
僕の仕事は全てを無に返すこと。・・・いっちょやりますかぁ。」
パキン。足元に生成された氷の上に立った氷月は、額に生えた美しい群青の一本角を輝かせ、口角を歪ませて不気味に笑うのだった。
.
793人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくちゃん - raizさん» ありがとうございます!楽しみに待ってます!! (2023年3月25日 7時) (レス) id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - 水希さん» コメントありがとうございます、面白いと言っていただけて感無量です・・・!続編はもう少しでできると思います。ソワソワが治まれば() (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - さくちゃんさん» 返信遅くなり申し訳ありません・・・!続編もう少しでできる予定です、もうしばしお待ちを・・・!! (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
水希(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白いです!続編が気になってソワソワしてます!更新頑張ってください (2023年3月23日 18時) (レス) id: 0489471443 (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃん - 続編待ってます!! (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:raiz | 作成日時:2023年2月25日 21時