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88. ページ38

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呼吸を整えたAは、一か八か絵心にそう告げた。もしかしたら、何を言っているんだと却下されるかもしれない。その時には、クビ覚悟で抜け出してやろう・・・。
そんな決意は、すぐに不要だったとわかった。絵心はAの顔を一瞥するとモニターに目線を戻し、「・・・今日だけだよ。」と言い放った。

「・・・ありがとう。」

絵心の顔は見えなかった。Aもその背中に背を向け、そう呟きながら部屋を出る。
扉が閉まったとき、Aは監獄の出口へ駆け出していた。

「(感知しろ・・・。この前全部思い出したでしょ、スグルの呪力・・・!)」

久しぶりに出た外だったが、それに感動している場合ではなかった。限界まで呪力感知を研ぎ澄まし、森の中の木という木を飛び移り、家の屋根の上を次々と移動すること数分。Aはやっと夏油の呪力を感知した。

しかし、ここからはまだ遠い。

「(っ、早くしないと・・・!)」

焦りがAの頭を支配する。そんな状態で考えたのは、術式でなんとか早く移動できないかというものだった。

「(空気の流れを変えて・・・。
ぅわ、速っ!?)」

その方法は空間内の空気を操作し、強風を起こすというものだ。それは意外にも上手くいった。
Aの体は強風に煽られいとも簡単に吹き飛ぶ。それは地上にも届くほどの強風で、道を歩いていた人間はなんだなんだと辺りを見回していた。
しかしそんなこと、高速で移動を続けるAには関係のない事だ。

そうしてしまえば、目的地まで着くのは早かった。
Aは見えてきた見覚えのある景色に、僅かに目を見開く。

「(・・・あれ、ここ高専・・・?スグルならもっと前線に来るんじゃ?)」

感じた違和感。Aは半壊した建物の並ぶ高専にふわりと降り立ち、全速力で走り出した。微弱な夏油の呪力を追い、道を右へ左へ曲がっていく。

タンッ、とAのブーツが地面を蹴った時だった。
Aは建物の影、夏油が血だらけで座っているのをその瞳に捉えた。その近くには、五条が立っていて。

「待ってッ・・・!!!」

今にも手を下してしまいそうなその手を、Aは必死に叫んで止めた。僅かばかり見開かれた五条の六眼がAの姿を映す。

「A・・・?」

夏油も驚いたようにAを見つめた。五条はそれを見やった後、Aに向けて言葉を紡ぐ。

「あー、なんでここにいんのか知らないけど、傑は僕がこの場で殺す。
Aは・・・見たくなければ、目瞑ってて。」

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さくちゃん - raizさん» ありがとうございます!楽しみに待ってます!! (2023年3月25日 7時) (レス) id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - 水希さん» コメントありがとうございます、面白いと言っていただけて感無量です・・・!続編はもう少しでできると思います。ソワソワが治まれば() (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - さくちゃんさん» 返信遅くなり申し訳ありません・・・!続編もう少しでできる予定です、もうしばしお待ちを・・・!! (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
水希(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白いです!続編が気になってソワソワしてます!更新頑張ってください (2023年3月23日 18時) (レス) id: 0489471443 (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃん - 続編待ってます!! (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:raiz | 作成日時:2023年2月25日 21時

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