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「二次選考は・・・。ステージがあるんだったっけ?」
「うん。アンリちゃんとAちゃんには各ステージで変わらず選手のサポートをしてもらう。」
Aがなるべく何時も通りになるよう質問する。それに、絵心が答えた。Aはあまりにも心配されていたため、これでは選手が集中できないと平気な演技をすることにしたのだ。
Aはそれなりに演技が得意である。体調を取り繕うのは意識すれば簡単だ。
「・・・Aちゃん、もう体調は大丈夫そう?」
「ウン!まだ本調子じゃないけど。仕事にシショーはないよ。」
「そっか、よかったぁ・・・。」
帝襟も安心したように微笑んだ。
・・・しかし、絵心だけは無言でAを見つめていた。
「(やっぱ鋭いなぁ。)」
そんなことを考えながら、Aは断りを入れてから部屋を後にした。帝襟はまだ少し心配そうにAを眺めていたが。
___そうして仕事を続けて行き、遂にその日はやってきた。
12月24日。百鬼夜行が決行される日だ。
その日になっても、Aへ召集命令が下ることは無かった。
さぁぁぁ、と水道の水が流れていく。Aはスポーツドリンクの粉を溶かしながら、ぼうっと考えた。
「(・・・このまま、終わるのかな。
高専側が勝つとしたら、スグルの死は、止められない。スグルが勝つなら、高専側への被害は甚大・・・。
そういえば、スグルは非術師・・・つまり、呪力のない人間が嫌いだったんだよね。・・・それなら、マキも・・・?)」
ピタリ。スポーツドリンクを作るため忙しなく動いていた手が、止まった。
___行かなくて、いいのか?本当に?・・・もしかしたら、大好きだった夏油が、高専の術師が、死んでしまうかもしれないのに?自分が行けば、被害は少なくなるかもしれないのに?
・・・何もしないまま、ここで待つのか?
はっ、と短く息が漏れた。濡れた手でくしゃりと前髪を掴む。乾いた笑いが辺りに木霊した。
「・・・・・・いいわけ、ないじゃんか。」
次の瞬間、作りかけのスポーツドリンクを置いてAは走り出していた。行先は勿論、絵心のいるモニタールームだ。
冬の冷たい空気が肺を刺した。其の儘全力疾走を続けて、Aは開いた扉に駆け込んだ。
はっ、はっ、と浅く呼吸を繰り返して部屋に入ったAを、絵心は少し目を見開いて見つめた。
「・・・っエゴ、今日は・・・今日だけ、外に出させて。おねがい。呪霊は、全部殺すから・・・。」
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さくちゃん - raizさん» ありがとうございます!楽しみに待ってます!! (2023年3月25日 7時) (レス) id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - 水希さん» コメントありがとうございます、面白いと言っていただけて感無量です・・・!続編はもう少しでできると思います。ソワソワが治まれば() (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - さくちゃんさん» 返信遅くなり申し訳ありません・・・!続編もう少しでできる予定です、もうしばしお待ちを・・・!! (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
水希(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白いです!続編が気になってソワソワしてます!更新頑張ってください (2023年3月23日 18時) (レス) id: 0489471443 (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃん - 続編待ってます!! (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:raiz | 作成日時:2023年2月25日 21時