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「あの日」の翌日。
御影は何時もの様に学校へ行き、そして頭にクエスチョンマークを浮かべた。何時も自分より先に学校に来ていたAの姿が見当たらないのだ。昔Aに聞いた話では、学校から家が近いというのに毎日早く起きてしまうのだとか。
御影は珍しく寝坊でもしたのだろうかと席につく。しかし、何時まで待ってもAが教室に入って来ることは無かった。
そうしてHRが始まる時間になった時、教室のドアがからりと開いた。それに顔を上げた御影だったが、そこに居たのは担任の教師。
Aはどうしたんだろうかと考えつつ教師の動きを目で追っていた御影は、教師の「今日は大事な知らせがある」という言葉に嫌な予感を覚えた。
「Aが、他校に転校することになった。」
そんな教師の一言に、教室中が騒然とする。
「え、Aちゃん転校するの・・・!?」
「待って、じゃあ何でここにAちゃんがいないの・・・??」
「そんな・・・。」
ざわざわと騒ぎ出す生徒達だが、誰よりも動揺していたのは御影だった。
「(は、転校?・・・彼奴らの言う通りだ、何でここにAがいない・・・?)」
つぅ、と頬を汗が伝う。
ざわつく教室内を静寂が包み込んだのは、天王寺が声を上げてからだった。
「待ってください、Aさんが転校するなら、どうしてここに本人であるAさんが居ないんですか!?」
その問いに、担任は静かに返した。
「ああ、随分急に決まったことらしくてな・・・。諸々の手続きはまだ済んでいないんだが、今日にでも出発しないといけないらしい。」
担任の言葉に、御影は僅かに目を見開く。彼奴は、俺の宝物なのに。凪もAが転校することに関してはきっと知らない。
「(急に決まったっつっても、なんで・・・。)」
御影はずっと落ち着かない気持ちで一日を過ごした。
そして、それから数日後。御影は部活に向かう前、Aの机に小さな紙切れが入っていることに気づいた。ノートを破った様な小さな紙で、それにはボールペンで書かれた文字が綴られている。
<急に転校してごめん。レオとセイのお陰で毎日楽しかった。>
簡潔に纏められたその文章に、御影はぎゅっと紙の端を握った。Aはこんな紙切れだけ置いて、何も言わずに去っていたのだ。いつに置かれた物かは分からないが、Aがこのメモを置いた時には、既に転校のことを知っていたのだろう。
御影はそれを様々な感情と共にそっとポケットに仕舞い、部活へ向かった。
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さくちゃん - raizさん» ありがとうございます!楽しみに待ってます!! (2023年3月25日 7時) (レス) id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - 水希さん» コメントありがとうございます、面白いと言っていただけて感無量です・・・!続編はもう少しでできると思います。ソワソワが治まれば() (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - さくちゃんさん» 返信遅くなり申し訳ありません・・・!続編もう少しでできる予定です、もうしばしお待ちを・・・!! (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
水希(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白いです!続編が気になってソワソワしてます!更新頑張ってください (2023年3月23日 18時) (レス) id: 0489471443 (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃん - 続編待ってます!! (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:raiz | 作成日時:2023年2月25日 21時