66. ページ16
.
2人は向かい合わせになって、そのまま何も言わずに食事を始める。先に食べ終わったのは意外にもAだった。
「食うの早っ。そんな俺と一緒に居たくないのマネージャーちゃーん？」
士道のそんな言葉に、Aは少し考えるような素振りを見せた。
そしてその後、クスリと不敵に笑って言った。
「さぁ。私の名前、『マネージャーちゃん』じゃないからよく分かんないかな。」
その時、薄青の瞳に浮かぶ渦巻きが士道にはよく際立って見えた。蛍光灯の白い光が瞳に入り込み、不気味に輝く。それはAの浮かべた笑みと相まって、ひどく美しく見える。
＿＿＿明らかに、普通の人間とは違う雰囲気。
士道は己の勘は正しかったと、この瞬間確信した。暫くそんなAを凝視してしまっていた士道は、いつの間にか人の居なくなった食堂で1人呟いた。
「･･･ひゅ〜。こりゃ痺れんね、Aちゃん。」
一方その頃、Aはというと。
「なんか背筋に悪寒が･･･。」
悪寒を感じていた。Aは両手を己の体を抱きしめる様にして回すと、士道の事を考え始める。
「(やっぱシドウって勘鋭いな、ブルーロックって『視えてたら』スカウトしたい人ばっかりだ。
イサギは隠れイカレポンチって感じだけど、シドウは堂々イカレポンチって感じ。他にもいっぱい向いてそうな人は居たけど･･･。)」
早歩きでカツカツと足音を鳴らしつつ歩きながら、思う。
イカれている人間はこのブルーロックで初日から何人も見てきた。その視点で見れば、凪や御影もイカれている、と言えるのだろうか。
もしもブルーロックにいる人達が全員視えてる、なんていうミラクルがあれば全員スカウトするのに。
･･･そこまで考えて、Aは思い直した。
｢(いや、全員サッカーに夢中だし、全員乗ってこないだろうな。どんな誘い文句使ったとしても。)｣
コツンと足音が止まり、自室のドアノブに手をかける。もしもの理想論を心の中で語ったって、そんなこと有りうる筈がない。しかも彼等は｢世界一｣しか興味が無いと来た。
彼等が表舞台で光を浴びる主役だとしたら、A達呪術師は舞台袖で闇に紛れ暗躍するスタッフ、だろうか。明らかに正反対だ。
｢(やめやめ)｣
Aは今までの思考をかき消し、自室へ足を踏み入れる。風呂は備え付けのでいいか、と考えたAは風呂に湯を張ってから、そういえば夜のパトロールをしていなかったと思い直し湯船に湯が溜まるまで施設内を歩き回るのだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 793人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さくちゃん - raizさん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！！ (2023年3月25日 7時) (
レス) id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - 水希さん» コメントありがとうございます、面白いと言っていただけて感無量です･･･！続編はもう少しでできると思います。ソワソワが治まれば() (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - さくちゃんさん» 返信遅くなり申し訳ありません･･･！続編もう少しでできる予定です、もうしばしお待ちを･･･！！ (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
水希(プロフ) - 初コメ失礼します！すっごい面白いです！続編が気になってソワソワしてます！更新頑張ってください (2023年3月23日 18時) (レス) id: 0489471443 (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃん - 続編待ってます！！ (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：raiz | 作成日時：2023年2月25日 21時
