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今村の次に発言していたのはこの棟での最下位、五十嵐 栗夢だ。名前はキラキラネームっぽい響きではあるが、名字と相まって栗っぽさが増幅されている。
「栗、足捻ってるっぽいのに何でそんな動けんの?」
「いやこの男だらけの空間で女子が現れたらアプローチしない手はないだろ!・・・っつか俺栗??」
「栗、テーピングするから動くな。」
「いやマジで俺泣くけど!?」
Aは「あー涙がー」なんて棒読みで泣く演技を見せる五十嵐を華麗に無視し、テーピングを施し始めた。
五十嵐は何か言いたげな顔で大人しく処置を受けている。
他チームZメンバーはその様子を苦笑しつつ見つめていた。
そうして五十嵐の処置も終わり、Aが立ち上がる。他に怪我人は居ないかと聞けば、先程の金髪インナーカラーの青年、蜂楽 廻が「そういえば潔、さっき腹にボール当たってなかった?」と呟いた。
Aはチラリと黒髪の青年に目を向ける。
そしてコツコツと其方へ歩み寄ると、己より幾分か背の高い彼を見上げて怪我についてのことを効き始める。
「痛みは?」
「え、えっと〜・・・ほぼない、かな。」
その曖昧な答えに、Aははてと首を傾げる。「ほぼ」とはつまりまだ若干痛みが残っているということだろうか。そう考えたAは潔に座る事を促し、彼の腹を軽く押した。
「ほぁ・・・!?」
「あぁぁああっ!!潔抜け駆けだぞお前!」
「そうだそうだー!!」
その行動にあまり女慣れしていないらしい潔は赤面し、先程の2人はブーイングを始めた。伊右衛門や久遠は親の様な顔でそれを見守り、蜂楽や成早、我牙丸はそれを面白そうに、雷市はくだらねぇとでも言いたげな顔で見ていた。千切や國神も呆れた様にそれを見ている。
しかし自分達に集まる視線をものともせず、Aは診察(もどき)を続けた。そうして出た結果は特に問題ナシ、ということだけだ。少々時間のロスになってしまったが、Aはこの選手にひとつ言っておきたいことがあったのだ。
「ねぇ、イサギ。」
「・・・へ、俺?」
Aが声をかけると、潔は驚愕したような顔で己を指差す。この場に潔という人間は1人しかいないのだが、なんて思いつつAは黙ってこくりと頷いた。
「私、さっきの入寮テストの様子、一部始終見てたけど・・・。
イサギはなんか、これから凄いことをする気がする。ガンバレ。」
Aはそう言いつつ立ち上がると、潔の頭をぽんと撫でた。
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さくちゃん - raizさん» ありがとうございます!楽しみに待ってます!! (2023年3月25日 7時) (レス) id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - 水希さん» コメントありがとうございます、面白いと言っていただけて感無量です・・・!続編はもう少しでできると思います。ソワソワが治まれば() (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - さくちゃんさん» 返信遅くなり申し訳ありません・・・!続編もう少しでできる予定です、もうしばしお待ちを・・・!! (2023年3月24日 21時) (レス) id: 1aa12f97ac (このIDを非表示/違反報告)
水希(プロフ) - 初コメ失礼します!すっごい面白いです!続編が気になってソワソワしてます!更新頑張ってください (2023年3月23日 18時) (レス) id: 0489471443 (このIDを非表示/違反報告)
さくちゃん - 続編待ってます!! (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: f6f0c24dc1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:raiz | 作成日時:2023年2月25日 21時