てん。 ページ12
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あのあと本当に書き上げなくていいのか、ご飯は今度時間のあるときでもいい、と何度か言ったけど、どうもお気に召さなかったらしく、「俺の中では石井ちゃんとの約束の方が優先やし、集中できんかったらエネルギー蓄えるのも大事やから」と説得されてしまった。
須貝「すまんね、おしゃれなカフェとかじゃなくて」
須貝さんが連れてきてくれたのは大学からも程近い定食屋さん。
『そんなことないです!何が出てくるのか楽しみです!』
須貝「そーお?こうゆうこと初めてなん?」
『初めてではないですけど、軽く10年は入ってないかと……高校ぐらいから入った記憶はないので』
須貝「ならお兄さん安心よ」
頼んだのは日替わり定食で、この日はアジフライだった。
めちゃくちゃに美味しかった。
でも思いの外、量が多くて半分弱ぐらい残してしまった。
須貝「やっぱ女の子には多いわな」
『すいません、さっかく連れてきてもらったのに』
須貝「そんなんええって…、それより余ったのもらっていい?
お代わりしたいんだけど、石井ちゃんが食べれないならそっちが先やなって」
須貝さんの提案に心底驚いた。
言っちゃ悪いが、人の食べ残したものだ。
それをするのは親ぐらいだと思っていたから。
須貝「あ、いや!さすがに口つけたもんはあかんけど、つけてないアジフライぐらいならどう?」
まぁ…それぐらいならいいか…。
そう思い小さく頷いた。
すると須貝さんは箸でアジフライを自分の皿に持っていくと空いていた左手で私の頭を撫でた。
私が大きく目を見開くと、須貝さんは「あ、すまん」と小さくはにかんだ。
そしてカウンターの奥に向かって声を張り上げた。
須貝「おっちゃん!味噌汁だけおかわりいい?」
ご飯を美味しそうに食べる須貝さんはなんだかキラキラ光っているように見えた。
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らい(プロフ) - 陽さん» ありがとうございます! (2022年8月29日 7時) (レス) @page31 id: 097a817d7e (このIDを非表示/違反報告)
陽(プロフ) - 好きです!応援してます! (2022年8月28日 12時) (レス) @page31 id: d969f9c7e9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らい | 作成日時:2022年7月17日 10時