斉木くんとモブの私

19-空助さんと私6(楠雄) ページ20

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今日は金曜日、なのだが…Aさんの顔が浮かない。少し気になったので、声をかけてみることにした。


ーー…どうしたんだ？

「えっ、あ、楠雄くん、おはよう！…えっと、何でもないよ、心配してくれてありがとう！」

(…楠雄くんには知られたくない。空助さんにデートに誘われたなんて…)


……なるほどな。
アイツ…遂にアクションを起こしてきたか。


(デートなんて初めてだから服装どうしよう…じゃなくて！やっぱり初めてのデートは好きな人と行きたかったな…でも断ろうにも連絡先全然分からないし、待ってるよ、って言われてしまったから行かないわけには…)


……初めて、か……。
確かに彼女の初めてを兄貴(アイツ)に取られるのは癪だな。


ーーAさん、今日の放課後、デートするか。

(……は！？え！？デート！？楠雄くんの口から！？デート！？！？)


Aさんが分かりやすく動揺している。


「え、あの、ちょ、楠雄くん、あの…どどどどどういうこと…？」

ーー…別に、前にも魔美に行ったじゃないか。2人で。

(あ、あれってデートだったんだ…！？ていうかデートってなんだっけ…！？男女で出かけたらそれはもうデートなの！？もうよく分かんないよ！！
…でも……楠雄くんから誘って貰えるなんて、こんなこと、きっと二度とないよね…)

「あの…じゃあ、よろしくお願いします…」


Aさんが頬を染めて、嬉しそうに、でもどこか恥ずかしそうに呟いて、頭を下げた。
その様子が可愛くて、思わず吹き出してしまった。


「え、なんで笑うの！？」

ーーよろしくお願いします、って…そこで言う言葉じゃないだろ。

「そ、そうかなぁ…？」

ーー…まぁ、誘ったからには楽しませるつもりだ。覚悟しておけ。


(えっ……何、楠雄くんのこんな顔、初めて見た……。こんな顔もするんだ、楠雄くん……。ていうか、楠雄くん笑うの珍しいから、こんな挑戦的に笑ってるの、新鮮…っていうか、何万倍も増し増しでかっこいい…！！！)


……僕は、一体どんな顔をしていたのだろうか。自分ではわからないが、Aさんの前では…いつもはあまりしない表情を、しているのかもしれない。



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