〃 ページ20
きっと今、私は酷い顔をしているだろう。
シャオロンは何も言わないで、私をじっと見つめている。
覚悟しているのか、自身の最後を。
……いや違う。目の奥をじっと見つめれば、彼が反撃の機会を狙っているのが容易に掴める。
今の状況、圧倒的に彼の方が有利だ。
しかし彼は私に攻撃することはできない。…彼の放った今までの言葉を全て裏切ってしまうから。
こんなところで硬直状態だなんて、可笑しいね。
「俺のこと、嫌いなんか?」
『ほんの少しだけ、嫌いだよ…私の“好き”じゃあなたを変えられないってことがよく分かった』
私は善い人だ。彼にとって都合の良いお人形のような物。
お人形は可愛いだけじゃつまらない。でも少しのスパイスを付け足すのが怖かった。
でも今は大丈夫。失う物はもうないのだ、だって私の魂はもう死んでしまった!
シャオロンは、呆れたように。そして吹っ切れたようため息をついた。
「__分かったわ、今回は俺の負け」
『……こんなの勝負事じゃない』
「お前はそう思っとるかもしれんけどな。
俺は勝ち逃げなんか許さんで」
俺だってお前の“幸せ”を優先しようとした。
そう呟いた彼は私からガラスの破片を奪い、涙も流さず冷たい顔をして、自らの首を引っ掻いた。
溢れる鮮血、生暖かい。シャオロンの体温を浴びて、吐き気がした。
でもこれで。
やっと、やっと解放されるんだ、この悪夢から。
そう思い私は起き上がる気力もないまま、そのまま目を瞑った。
「おーい、起きろー」
やっと私は新たな平穏を掴み取ったんだと、そんな確信を持ちながら私は目を開けた。
「馬鹿やなあ。もうあの世に行く方法はないで…ずっと一緒や」
朝日と共に、差し伸べられた“透けた”手が私に触れようとする。
目に映るのは、あの黄色の瞳。
もうやめて。と呟いた私を見て、悪魔は柔らかく微笑んだ。
***
end 敗者の楽園
87人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花氷 ベタ(プロフ) - 夢野さん、感想ありがとうございます! (2022年7月16日 16時) (レス) id: 728b26bf44 (このIDを非表示/違反報告)
夢野(プロフ) - うわあ好き(?)これからも更新めちゃくちゃ楽しみにしてます!!! (2022年7月16日 15時) (レス) id: 078c74bdad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:花氷 ベタ | 作成日時:2022年7月16日 14時