九頁目 ページ11
体感で1時間経過した頃。
少しずつ散乱になっていく思考をまとめきれず、私は何度も鬱さんに問いかけた。
……最終的にはシャオロンと話し合うことになってしまったのだが。
私の意見に鬱さんは賛同したような表情を浮かべ、立ち上がる。眉は少し垂れていた。
恐らく、最後まで私たちを救けきれなかったことに罪悪感を抱いているのだろう。
話していて分かった、彼はそんな優しい人だ。
そしてまた私たちは長い廊下を歩き、
本堂に戻った頃には、コネシマさんとシャオロンは眠ってしまっていた。
硬い床で埃まみれの中、よく眠れたなと感心すると同時に、
ちゃんと待っていてくれたことを嬉しく感じる。
鬱さんが2人を蹴飛ばして起こした後、私とシャオロンは遠くの旅館に泊まることになった。
家に帰るのも危険すぎるし、此処にいると、2人まで罪に問われる可能性だってある。
幸い金ならシャオロンのおかげで幾らでもあるので、私たちは車に乗り道路を走り続けた。
車内は所々砂嵐の混じった、ジャズが流れている。
昔の彼だったらよく分からないと毛嫌いしていただろう。
何気なく感じる成長に、お互いすれ違った日々を思い出し、目の前の夜景から目を背けたくなった。
最後に、さようならと。そして愛しているぐらいは言いたかったな。
私はシャオロンの横顔を眺め、恋人と重ね合わせていた。何も似ていないし、雰囲気だって違う。
だったら私は何故、彼を否定せずにだらだらと「罪」から逃げ続けているのか。
鬱さんに言われた『同情』という言葉がぴったりな気がする。
私は悪い奴だと再認識したのはその時だった。
「1時間もさ、何話とったん……嗚呼。ごめん、何となく分かった」
『いいよ。着いたら話すつもりだったからね。動揺で事故起こされても困るしね』
「俺はいいけどな。起こしても、もう何も手元に残らないんやし」
『駄目だよ……もっと酷い地獄に行くことになっちゃう』
私がそういうと、シャオロンは年相応に、少し大人びた顔をして笑った。
そして真面目だなと呟いた彼は、酷く思い詰めた顔をしている。
その顔を私がさせていると考えたら、心臓を撫でられた後、思いっきり握りしめられた感じがした。
「着いたで」
彼がそういい止まった先は、古びた旅館。人の気配はまばらだ。
周りは木々が鬱蒼と茂って、蝉が未だに鳴いている。
シャオロンは車からおりる私を見て、「話をするのにぴったりやろ」と笑った。
--------
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
花氷 ベタ(プロフ) - 夢野さん、感想ありがとうございます！ (2022年7月16日 16時) (
レス) id: 728b26bf44 (このIDを非表示/違反報告)
夢野(プロフ) - うわあ好き(？)これからも更新めちゃくちゃ楽しみにしてます！！！ (2022年7月16日 15時) (レス) id: 078c74bdad (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年7月16日 14時
