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此処は分厚い壁で覆われているためとにかく暗い。
非常用の懐中電灯を灯した時、その部屋の狭さに驚いた。
落ちた壁と頭がぶつからないよう、彼を蹲りさせたが、
それでも肌は触れ合っている。
正直こんなに狭いとは思わなかった。
トイレの個室ほどの範囲。
天井は立つことさえできない。
良かった、立っていたら首が折れていた。
そんな狭い部屋の中、必死に私のためにスペースを開けてくれる
切島くんに感謝しか出なかった。
「かたいですねこの壁。ドアも無いし」
『個性を使っても傷一つつかない。周りの音も聞こえない。
携帯もつかないし、全て遮断されてるね。
……気絶させたら解ける個性だといいんだけど』
八方塞がりとはまさにこの事。
ずっとヒーローとして勉強に励んでいても、
流石に今の事態の対処法は習っていない。
ひたすら辺りを調査するしかないんだ。
日光もないため、室温は少しずつ低下していく。
二酸化炭素濃度も濃くなってきたため、頭痛がしてきた。
『大丈夫、寒くない？』
「大丈夫です！！でも、近」
いやわかる。とにかく顔が近いんだ。
初対面の先輩と、密室に閉じ込められるなんて
ただの苦行でしかないよね。
彼の耳がほんのり赤くなっているのを見て
思わず釣られそうになる。
気まずい。頼むから早く出してくれ！！
そんな願いが届いたのか、ぐらりと体が揺れた。
「壁が、揺れてる？」
『きっとヒーローが壊そうとしてくれているんだよ』
十分ほど経った時、
私たちは次々と加えられる振動に気がついた。
おそらく戦闘も終盤に差し掛かったからだろう。
空間がぐらりと揺れ、壁に面していた背中にもほんのりと痛みが生じた。
『切島くん、危ないからくっついて』
恥ずかしいがしょうがない。
私は切島くんを抱きしめるように中心へよらせた。
うわごめん。
まじで謝るから顔を赤くしないで。
自分がただの痴女に思えてくるが、これしかない。
目の前にいる後輩を守れなくて、何が先輩だ。
背中から伝わる重い振動に
顔をゆがめそうになるが、必死に堪えた。
「うわっ、大丈夫ですか！？」
さらに大きな振動が加わり、
思わず切島くんがこちらにもたれかかる。
明らかに初対面がする体制じゃないのを察したからか、
最後の方は無言になってしまった。
もう彼なんて髪にも負けないほど顔が赤い。
なんかヤバいことをしている気分だ。
『いつ出れるの……？』
「きっと後少しですよ！！」
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
