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新2章・陰ーYui=roseーアシュリーside ページ36

とりあえず外に出ようと腰を上げる。
すると、いきなり目の前が黒く染まった。
ぐらりと体が倒れ、衝撃と痛みが体中を襲った。
そして、それを起こすように、ボクの手にもう一つの手が添えられた。
冷たい。まるで氷で出来た彫刻みたいだ。
無意識にその手を握り返す。
上から声が降ってきた。
?「彼に、復讐したいんでしょ?」
ボクは上を見上げた。
真っ黒なローブから、抜けるような雪の白髪が見えた。
暗く影を落とした肌は、異形と言えるほどに白かった。
その中で、赤色の目が異彩を放っていた。

そこにいたのは、絶世の美少女だった。

?「復讐には力が必要だ、だから神に願いて乞うた。違うか?」
ボクはゆっくりと頷いて、次にこう聞いた。
ア「君は、誰? ここは、どこ?」
?「……わたしに、言っているのか?」
自分を指差してそう答えた。
質問を質問で返された、と多少驚きながら、もう一度頷いた。
?「___そうか。それなら教えてやるよ。ユイ・カラレーヴァ・イリュージア。そう言えば大抵の人は分かる」
ア「ユイ__カラレーヴァ・イリュージア!?」
ユイ、と名乗った少女は、こちらを見てにこ、と微笑んだ。
ボクは慌てて居住まいを正した。
そして、彼女の前に跪く。
ユ「ふぅん。露西亜(ロシア)語くらいの知識はあるか」
これは失礼を、ユイ・カラレーヴァ・イリュージア様。と告げる。
ユ「知ってるらしいが、カラレーヴァは女王、イリュージアは幻想を意味する、つまり」
ユイはくるりと反転した。
そこには、半円球体の星空が映し出されていた。
そこで、ユイの顔がはっきりと映し出された。
プラネタリウムの星空に照らされた顔は、僅かに微笑みの仮面が貼り付けられていた。
ユ「わたしは幻想世界の【中では】本物の女王だ。ただし、それは現実世界では受け入れられなかった。わたしも王族の一人なのに。可笑しいと思わないかい?」
彼女は、ゆっくりとあなたも、と告げた。
ユ「願ってもないのにマフィアの香主の家に生まれたしまったがための差別。体に刻まれているはずだ」
治っているはずの古傷が疼いた。__腕の煙草の跡はくっきりと残っていたのだが。
ユ「運命だと諦めてしまうか? そんな事する必要ない。ほら、ユグドラシルの苗木を焼き払ってしまいなさい」
言われるままに、自分の腕に火を近づけた。
そして、一瞬のタイムラグの後、焼け付いた痛みが腕を襲った。

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作者名:早苗 | 作成日時:2016年10月22日 14時

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