死のゲームとオトモダチ～loopline～【オリジナル】 (ページ32)

今日:13 hit、昨日:5 hit、合計:1,219 hit

新2章・陰ー魔法使いと神の囁きーアシュリーside ページ32

水「…………ふふ」
どんな夢を見てるんだろう。
ボクは、ミナセとやらの頬をゆっくりと撫でる。
きっと暖かい環境でぬくぬくと育った幸せなお坊っちゃんなんだろう。
ボクは「水瀬の女装巫女を持って来い」としか聞かされてない。
水瀬、彗介。
その名のとおり彗星の尾みたいな淡い水色の髪とさくらんぼみたいな真っ赤な瞳が特徴だからすぐ分かると言われたが、どうやらこの「水瀬」は髪を紺色に染めているみたいだ。
なぜそんな事をするかは、ボクに知る術はない。
ふあぁ、とあくびを一つする。
んーう、見張りにも飽きた。
ア「………ユグドラシル＝トランピウディ」
そこに、黄緑の髪をツインテールにした、エメラルドグリーンの瞳の、トランプ柄の服を着た少女が立っていた。歳は１５歳ぐらいだろう。
ア「眠いから少し寝る事にするよ。見張りよろしく」
ユグドラシルは、ゆっくりと頷くと、謎の葉の浮いたカシスオレンジが現れた。
カシオレを凶器に変える気か、と一瞬思ったが、きっと眠りを深くする薬草か何かだろう。ユグドラシルは木や葉……植物を操る精霊だからだ。
グラスをぐいっとあおると、心地良い眠気が襲ってきた。
そして、ゆっくりと眠気に意識を委ねた。

目が覚めると、そこは巨大な木の中だった。
………「巨大な木の中だった」？
ア「…………は？」
大きな葉で創られたベッド。木のこぶが至る所に見える。
そのベッドにボクは横たわっていた。
上半身を起こして、寝ぼけ眼をこすってみる。
夢じゃ、ない。
ア「……どこ？」
葉っぱの匂いが鼻を掠める。
ぐるぐると見回すと、ドレッサーの上にメモが置いてあるのが見える。
真っ白な紙に緑色のインクで書いてある。
『アシュリー様。アシュリー様。今、あなたはユグドラシルの中にいます。出たくても出しません。アシュリー様。アシュリー様。永遠に掴んで離しませんから。』
ユグドラシルの、中？
あの、精霊の、ユグドラシル？
分からない。
葉の匂いが鼻腔を掠めた。
…………………。
この、能力。
ポケットの中をガサゴソする。
シガレットケースの中に煙草が数本。あ、また補充しとかなきゃ。
ライターは火がつけばいいという極論で安いものを数個持っている。
その内3個はオイルが切れている。ライターオイルなんてもの持ってない。
かち、かち、とボタンを押してみるが、どれも火花をパチパチ出すだけで火は出ない。
ボクはもう一度、葉のベッドに寝転がった。