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新1章・陰ーストロベリージャムの甘い空ーシフウside ページ11

シ「…………夕焼け」
赤い、まるでストロベリージャムか何かのような空は、まるで俺を飲み込むように覆い被さってくる。
外界では、蒼羅の件とか、晴斗のアイデアとかetsで、ミシェルのところに殴り込みにいく事になったそうだ。
バカだな。ミシェルに勝てるわけないのに。
せめて百香だけは守らなきゃ。
百香は俺の真っ白な宝物だから。
ミシェルに穢されてたまるものか。
体も心もいらない。
ただ、百香さえ生きていれば、すべて解決するのだ。
だって、百香には簡単にリザレクトが使えるくらいの魔力と素質がある。
墓から出してやって蘇生すれば、すべて元通り。
そして、晴れて俺も、半永久に続く呪縛から開放される。
シ「…………俺は、一体誰なんだろうな」
時々忘れかけること。
俺は、誰?
忘れかけること。忘れたらいけないこと。
それなのに、頭の中で繰り返し響き続ける。
いやだ。忘れたいのに。
忘れるな、忘れたくない、嫌、忘れたい!
頭の中がこんがらがる。
痛い。痛い。痛い。痛い。
頭が痛い。
________っ。









勝てるわけ、ないのだ。
不意に、目から汗が出てきた。
頬を伝って、ゆっくりと地面を濡らす。
ストロベリージャムの空は、ボロボロと果肉を落とし始める。
シ「____雨?」
それは、傘など持っていない俺の頭に、容赦なく降りかかる。
汗と混じって、顔が濡れそぼる。
しかし、そんな事気にしないように、頭には声が響き続ける。
体が痛い。
苦悶の喘ぎを上げる。
シ「………ぁ、ぐ………」
さすがに耐えがたい痛みに、ぼたぼたと汗は量を増す。
お姫様は、騎士に守られるのが役目。
だから、騎士がこんな事してたらいけないのに。
いや、違う。
俺なんて、騎士気取りの無知なバカじゃないか。
シ「……ぁ、はは」
そう思うと、汗が垂れてくる。
なんのために頑張ってきたのか。それすらも否定するとしたら、俺の生きる価値って何?
自身の事すら嘲笑する。
笑い声が、僅かに喘ぎに混じる。
シ「ぁは、はは、ぅ、あ、は、は」
おかしくなっているのは俺の方じゃないか。
ストロベリージャムの空。
赤く甘い、幻想の空。
手をのばせば、届くかもしれない。
飴細工の草、クッキーの地面。
固い。でも、甘い。
特濃エスプレッソの笑顔は、この世界には合わない。
シ「だから、帰ってくれないか」
声はピタリと止んだ。
どす黒いなんて言葉じゃ足りない。
ミシェルの笑顔の裏には特濃エスプレッソが隠れている。
あいつに勝てるはずなんて、ないのだ。

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作者名:早苗 | 作成日時:2016年10月22日 14時

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