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新1章ー絶望的な世界ーマリア、NOside ページ40

ひゅう、ひゅうと過呼吸を起こす。
苦しい。一体、なぜ?
答えなんて分かっているくせに。
水道の蛇口を捻ると、透明な水があふれてくる。
それを口の中に苦しいぐらいに詰め込んで、飲み込もうとしたが入らなくて、自然と吐き出した。
おぇ、と汚い声が聞こえる。
それが他ならない自分の声だと気付くのにそう時間は必要なかった。
そして、帰りの会の始まりを告げるチャイムの最初のコールが鳴り終わる前に教室にワープ。
日直の男子が荒々しく叫ぶと、皆は無言で礼をした。
何があったのか? 先程までいなかった私が知る術はない。
すると、次の指示が出る前に担任が教卓に立つ。
そして、無駄に神妙な顔でこう言い出した。
先「さっき、守寺英史くんの財布がだれかに盗まれました」
…………は?
それ、だけでこんなに騒然としているの?
小学生の持つ財布なんて、いくら金持ちでも野口英雄が入っていればいい方だ。
確かに貴重品ではあるが、学校に財布は持ち込み禁止。それで無くしたり盗まれたりしたなら自己責任だ。
私はため息を付いた、瞬間にちらりと視線を感じた。
「目」だ。
クラスの全ての目が「私」に向けられている。
そうか、今まで作り上げてきた友情ごっこを信じて、最近転校してきたばかりの私を疑っているのだ。
くだらない。本当にくだらない。
その瞬間、怒りなのかなんなのか、内なる衝動が暴れだした。
衝動的に、立ち上がって、それからの事は覚えていなかった。






NOside
マリア、もとい雪里星奈はすっくと立ち上がると、クラス中どころか隣の教室にまで聞こえるのではないか、というぐらいの大声で叫んだ。
マ「こっちを見ないでください。迷惑よ」
クラス中が騒然として、それでも叫ぶ。
マ「静かにしなさい、人の話を聞く時は静かにする、そんな能もないのかしら」
しーん、とした。
もはや置物と化した担任教師をどかすと、マリアは自ら教卓に立った。
マ「そんなに私の顔が可笑しい? それとも、私の事、証拠も無しに疑うのかしら?」
一人の男子生徒が、蚊の鳴くような声で「ずっと過ごしてきた仲間を疑いたくないから」と答えた。
マ「じゃあ、私は『仲間』じゃないとでも?」
だれかが「悪魔」とつぶやいた。
マ「悪魔!? ええ、私は魔女! 私は魔女! あっているわ、でもね」
「二度とその言葉を口にしないで頂戴」
それ以降の事は、誰も覚えていなかった。

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作者名:早苗 | 作成日時:2016年9月19日 9時

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