第188話 ページ38
久しぶりに僕は、仕事が終わると真っ直ぐにある所へと向かった
扉の前に行くと、軽く3回ノックした
『どうぞ』
そう、扉の向こうから声が聞こえて、僕は扉を開けた
「久しぶり、雫ちゃん」
あの日以来、何回か彼女の元へ来ていたが、暫く来ていなかった
少しだけ伸びた髪と、ほっそりとした手足に筋肉がついたように見えた
『ああ、宏太朗くん！』
嬉しそうな声で返ってくると、僕は彼女のベッド横の椅子に座った
「どう？体調は」
『ええ、とっても』
ちゃんと見ると、顔色も良さそう
そこですぐさま僕は本題に
「…で、どう？そっちは」
彼女は、ゆっくり首を横に振った
「…そっか」
「パイセンは？」
『それが…』
彼女は少しだけ嬉しそうにパイセンの話をし始めた
彼女が目を覚まして、記憶がないことに気づいた時、パイセンの顔は凄く悲しそうな顔をしていた
人に興味無さそうなパイセンのあんな顔は初めて見た
…それと同時に
彼女もとても悲しい顔をした
…だから、僕は2人にはどうしても“壊れては欲しくなかった”
だから、パイセンと彼女には少しだけ厳しいことを言った
…いつか2人がまた元に戻って欲しくて
…あんな顔させてしまうんだもん
そんなの僕には出来なくて
お互いにきっとこの世界で2人だけなんだろうなって
だから、パイセンには逃げないでって
だから、彼女には必ず思い出してって
…すこし、心配はしていたけど、どうやらゆっくりだけどお互いに近づけていけてるみたい
「…よかった」
『え？』
「ううん、こっちの話」
『…あ、実は…』
ここだけの話なんですが、って彼女は僕に1つ打ち明ける
「…えっ」
小さく縦に頷いた彼女
「ねえ、それってパイセン知ってるの？」
『…いえ』
だって忙しそうだから
そう彼女は呟いた
『…雨の日くらいしか、会えないから』
そう寂しそうに彼女は外を見つめた
『…雨、暫くは降らないので』
彼女は僕にそう笑いかける
…いつだってパイセンと彼女には雨が降る
…雨の日にしか会えないふたりか
そんなことを思いながら、僕は少しだけモヤモヤした
「ねえ、雫ちゃん」
『はい？』
「これは僕の提案なんだけど…」
『え？』
そう僕は耳打ちする
彼女に近付いたとき、ふわりと甘い金木犀の香りがした
それは、病院の庭に植えられた金木犀が、少しだけ開いた窓から入ってきたのか、はたまた彼女の香りだったのか分からないけど
…ちょっぴり甘く切ない香りがした
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雅 - eriiiさん、いつもありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。良かったらBGM素敵なやつを脳内再生しながら読んで頂けたら笑^^*引き続き、続きもよろしくお願い致します。 (2021年4月24日 22時) (
レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、素敵な感想ありがとうございます。今日更新しましたので、続きもぜひよろしければ^^*そう言って下さりとても嬉しいです。頑張りますね^^* (2021年4月24日 22時) (レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - きゃー！！ドラマだったらここで絶対主題歌が流れて、次週に持ち越しの展開ですね！←読んでてめっちゃにやにやしちゃいました(*^^*) (2021年4月24日 6時) (レス) id: 5892b12f93 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 夢主ちゃんの場所は、江口さんの隣だと感じてほしい。そして、いつも雅さんの素敵な書き方に感動しています。続きも頑張って下さい！ (2021年4月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様でした。ドキドキしながら読んでいきました。お互い想い合っているのになぁ…と思いながら、でも夢主ちゃんが何を感じで江口さんに駆け寄った時には胸にきました。全部思い出してないかもしれないけど (2021年4月23日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年3月28日 0時
