第166話 ページ16
貴女side
結局、部屋を出ていった人は帰って来なかった
その方が呼んでくれたであろうお医者さんに体を少し診てもらう
…悲しい
ぎゅっと胸が痛い
頭に残るのは、あの男性の悲しい顔
…あんな顔して欲しくなかった
…あれ
彼のことを思うと目からポロポロと涙が出た
…悲しい 胸が苦しい
そう思って、彼が出ていった部屋のドアをそっと見つめた
そんな時、宏太朗くんが「雫ちゃんに聞いて欲しいことがあるんだ」と
宏太朗くんはまるで物語を話すかのように
事故前後の話を始める
私は彼の話す内容に、少しだけ相槌を打つ
隣で安元さんと良平さんが、たまに宏太朗くんが話す内容に付け足しをしてくれた
「…で、さっきの人がね、江口さん」
『…江口…さん』
口に出して、直ぐにしっくりくる
…嗚呼、私の身体は覚えてくれているんだね
ありがとう
「…江口拓也さん、分かる？」
『江口…拓也さん』
何回も頭の中で彼の名前を検索する
その度にズキリっと心と頭が傷んだ
私は小さく首を横に振った
「…そっか…」
「…」
「…」
三人は肩を下げる
『ごめんなさい…』
「天宮ちゃんが謝ることじゃないよ」
「そーそー、それに謝るなら江口に言ってやって」
…江口さん
『江口さんは…私の』
なんの人ですか？そう聞こうとしたが上手く言葉が出なかった
「…で、こっから先は雫ちゃんが頑張るとこ」
「おい、宏太朗」
「言わなくていいの？」
「駄目です、自分で知らなきゃ」
「…じゃないと二人は駄目になる気がするから」
そう宏太朗くんは言った
『…あの、私、誰かと約束を…』
「それも。絶対思い出して」
「僕の口から聞いたら約束じゃないでしょ？」
絶対、絶対思い出してね、って宏太朗くんと約束をする
でも私は、少しだけ伝わった
…きっと彼はとっても大切な人
だってこんなに苦しいんですもの
嗚呼、なんで忘れてしまったのだろう
だから…必ず────────
『ありがとう、話してくれて』
『きっと…江口さんは私の大切な人なんですね』
そう答えると三人はびっくりしたような顔をした 宏太朗くんは少しだけ安心したような顔をして
「…愛の力だね〜」
小さい声で安元さんが何か言った気がしたけど、聞こえなかった
…ごめんなさい、忘れてしまって
…ごめんなさい、あんな顔をさせてしまって
きっと、きっと思い出すから
だから、もう少しだけ待っててください
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雅 - eriiiさん、いつもありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。良かったらBGM素敵なやつを脳内再生しながら読んで頂けたら笑^^*引き続き、続きもよろしくお願い致します。 (2021年4月24日 22時) (
レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、素敵な感想ありがとうございます。今日更新しましたので、続きもぜひよろしければ^^*そう言って下さりとても嬉しいです。頑張りますね^^* (2021年4月24日 22時) (レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - きゃー！！ドラマだったらここで絶対主題歌が流れて、次週に持ち越しの展開ですね！←読んでてめっちゃにやにやしちゃいました(*^^*) (2021年4月24日 6時) (レス) id: 5892b12f93 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 夢主ちゃんの場所は、江口さんの隣だと感じてほしい。そして、いつも雅さんの素敵な書き方に感動しています。続きも頑張って下さい！ (2021年4月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様でした。ドキドキしながら読んでいきました。お互い想い合っているのになぁ…と思いながら、でも夢主ちゃんが何を感じで江口さんに駆け寄った時には胸にきました。全部思い出してないかもしれないけど (2021年4月23日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年3月28日 0時
