第163話 ページ13
あの後結局パイセンは帰って来なかった
パイセンの代わりに入ってきたのは
主治医の先生
雫ちゃんの事を一通り診て、部屋を後にする
「…」
あまりの状況に口を閉ざす俺ら
消えてしまったのはパイセンの記憶
あまりにも辛すぎて、みんな黙るしか無かった
…なんで、パイセンが
主治医の先生が出ていったあと、
ポロポロと涙を流し続ける彼女
そんな彼女の姿を見てるのも辛かった
『……あの』
そう沈黙の空間をきったのは彼女だった
「…どうしたの、雫ちゃん？」
『…あの方は』
また、3人言葉を失う
なんと言ったらいいか
分からなかったから
でも、僕はギュッと拳を握りしめ
「雫ちゃん、聞いて欲しい話があるんだ」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…いた
パイセンが戻らず、しばらく経って
病院内をすぐさま探した
でも、パイセンは中々見つからなくて
仕方なく諦めようとした時、やっと見つけた
いつもより更に猫背
なんだか小さく見えた
「…パイセン」
そう声をかけると、振り返らず「んー？」と返事が返ってくる
「…帰らないんですか？」
「…帰る場所、ないから」
そう弱々しく返ってきた
「…待ってましたよ、みんな」
パイセンが戻ってくるのを
「…ごめん、今は…辛い」
ちょっとだけ休憩って
また彼は僕を見ずに言った
「いいんですか」
「何が〜？」
「雫ちゃん」
僕の言葉にぴくりと反応する
「待ってます」
「……」
「パイセンのこと、ずっと待ってます」
あの日、彼女が離さず握ってた箱
あの日、彼女が意識を手放すその時まで言っていた言葉
僕はだいぶ酷いことを言っている
そんなことは分かっている
でも…
「パイセンだけなんです」
「……」
「あの日、雫ちゃんが約束したのは」
「パイセンなんですよ」
「……」
彼女が覚えていないのなら
覚えているのはパイセンだけなのだから
僕じゃだめで、
僕がその相手ではないから
「…逃げないで、江口さん」
「向き合ってあげてください」
そう僕は、パイセンに酷いことを言った
辛いことを言った
「…こうたろー」
「…はい」
「…今日、雨かな」
そう、空を見たパイセンは言う
「…え？」
「…雨の香りがする」
何が何だか分からなくて、
「まぁ…時折雨って言ってた気が…」
なんて答える
すると、パイセンは吸っていた煙草の火を消すと僕の横を通っていく
ポンポンっと軽く肩を叩いて
「お疲れ様」と──────
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雅 - eriiiさん、いつもありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。良かったらBGM素敵なやつを脳内再生しながら読んで頂けたら笑^^*引き続き、続きもよろしくお願い致します。 (2021年4月24日 22時) (
レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、素敵な感想ありがとうございます。今日更新しましたので、続きもぜひよろしければ^^*そう言って下さりとても嬉しいです。頑張りますね^^* (2021年4月24日 22時) (レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
eriii(プロフ) - きゃー！！ドラマだったらここで絶対主題歌が流れて、次週に持ち越しの展開ですね！←読んでてめっちゃにやにやしちゃいました(*^^*) (2021年4月24日 6時) (レス) id: 5892b12f93 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 夢主ちゃんの場所は、江口さんの隣だと感じてほしい。そして、いつも雅さんの素敵な書き方に感動しています。続きも頑張って下さい！ (2021年4月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 更新お疲れ様でした。ドキドキしながら読んでいきました。お互い想い合っているのになぁ…と思いながら、でも夢主ちゃんが何を感じで江口さんに駆け寄った時には胸にきました。全部思い出してないかもしれないけど (2021年4月23日 23時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年3月28日 0時
