第209話 ページ9
ザアアッ─────
雨音が、まるでノイズの様にきこえる
『……終わりにしましょう』
そう彼女はいった
俺は、胸に寄りかかる彼女を支えながら
ぼぉーっと雨が地面へ落ちていくのをみる
不思議と頭は冷静だった
耳からきこえるのは、雨音のノイズ
ゆっくりまるでスローモーションになったかと感じるくらいに、雨が落ちていくように思えた
冷静でいれたのは、彼女がそう言い出す気がしていたからかもしれない
…夏の雨が降る日ってこんなに静かだっけ
そんなことを思いながら
静かに
｢……そう｣
とこたえた
｢……そっかぁ〜｣
そう言い、体を少しばかり反らして
天を見る
しばらくの沈黙
……彼女は、今どんな気持ちなんだろうか
｢……分かった｣
そう、彼女の顔を見ないでこたえた
すると、彼女はピクリと少しばかり反応して
やっと顔を上げた
…涙をパンパンにためて
…そんな顔をみてしまったら
…そんな彼女の優しさに触れてしまったら
…手放すことなんて出来るわけなかった──
そんなことを考えていると
彼女はぐっと堪え、
最後に今日1番の笑顔を作る
彼女の誕生日に…
俺が今日見た中で1番のめいいっぱいの笑顔で
俺が今日見た中で1番作りものの笑顔で
溢れそうな涙を堪えた最初で最後の笑顔だった
『…ありがとう、江口さん』
……嗚呼、そうか
｢…ん、じゃあ、終わりにしよう｣
生暖かい雨が降る中
俺の声は冷たく響く
｢…ただ、｣
『…え？』
｢……俺もさ、まだ言ってないことあってさ｣
『…はい？』
｢言い忘れてたことあって、
それだけは言わせて？｣
『……？なんですか？』
彼女は、不思議そうに俺の事を見た
向かい合って、やっと2人とも顔を合わせる
その瞬間、緩んだせいか目から一筋涙が零れる
ハッとする彼女
それでも言葉を紡ぐ俺
｢…雫さん｣
そう彼女の名前を呼べば
俺はそのまま彼女に口付けを落とす
目を見開いて、
何が起きたか分からず
驚く彼女
そのせいで、また更に数滴落ちて
俺の手の甲濡らす
…6秒間のキス
だめって言われてた唇に俺は口付けをおとす
そっと唇をはなすと
驚いた彼女は、目を数回ぱちぱち
もうその目には涙はたまっていなかった
……なんだ、そうだったんだ
……もっと早く気づけばよかった
……彼女の涙を止める方法
……彼女に雨を降らせない方法──
｢……俺と付き合ってください｣
｢…俺のそばにいて欲しい｣
降りしきる雨音のノイズが
俺ら2人を包み込んだ
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雅 - Aさん» Aさん、コメントありがとうございます。・・・好きな場面まで！ありがとうございます。感想を言って下さるのはとても嬉しいです。今後の参考にさせていただきますね。 (2020年11月26日 0時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、最後まで読んでくださりありがとうございました(*^^*) (2020年11月25日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - afterstoryもとっても素敵でした！！個人的に花言葉入ってるのがすごく好きできゅんってしました；； (2020年11月25日 12時) (レス) id: a957c976a9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - こちらこそ、素敵な作品を作って頂きありがとうございました！リクエストした宏太朗くんの話も素敵でした！２人の幸せが伝わる感じでした(^^) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、リクエストありがとうございました。おまけ話は完結させて頂きました。毎回コメントもありがとうございます。こちらの作品はこれで全て終わりとなりました。今まで読んでくださり大変ありがとうございました。 (2020年11月23日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年10月21日 22時
