第206話 ページ6
貴女side
…足が震えた 声が出ない
息の仕方を忘れたみたいに呼吸が出来なくて
まるで陸に打ち上げられた魚のよう
……苦しい
あの日の現場を見た訳では無いのに
あの雨の日がフラッシュバックする
ずっと蓋をしていた
最近の雨のあたたかさに私は忘れかけていた
そんな私の気持ちとは反対に
彼は｢よかった、よかった｣って笑う
バイクに不満を言いながら
…ちっとも良くない
｢…よくなんかない！｣
自分でもびっくりするくらいでかい声が出た
しっかり確かめなきゃ
何も出来なかったから
“あの日”の私は何も出来ていないのだから
ある日突然居なくなってしまって
好きだ、ともう囁いてくれもしない
…嗚呼、雨音が五月蝿く耳に響く
私は、彼の胸に飛び込んだ
彼の温もりを感じながらも
ちっとも心は落ち着かない
頭の中が真っ白で
ただただ雨音だけが鳴り響く
｢……大丈夫、大丈夫だから…｣
『……っ…』
｢…大丈夫、いるよ、ここに居るから…ね？｣
真っ暗な雨音の世界にふと彼の声が聞こえた
大きな体でめいいっぱい私を抱きしめる
長い腕で私を包み込む
ドクンドクンと彼の血液が、心臓の音が
きこえて、やっと頭の中がすーっと落ち着いてきた
パクパクと魚が空気を取り込むように
下手くそな呼吸でゆっくりと
息を吐いたり吸ったり
その度に、彼は背中を擦りながら
小さい声で｢大丈夫、大丈夫だから｣
って私の耳に囁いた
ずっと欲しかった言葉だった
気がつくと私は、子供みたいにわんわん泣いてしまった あの日の分まで泣いてしまった
それなのに彼は優しく全部受け止めてくれた
だからだったのかもしれない
…彼に全てを打ち明けようと思ったのは
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
公園で彼は私の髪を拭いてくれた
甘い彼の香水が鼻腔をくすぐり
少しだけ安心する
彼が優しい声で囁けば、心が落ち着いた
渡されたミルクティーが本当に温かい
すぅーと息を吸ってから
『…大事な、大事なお話があります』
そう言うと、彼は一瞬ハッとして
再び元の顔に戻り、
少しばかり悲しそうな目をしながら
｢……うん、聞かせて｣
そう答えた
まるで今から話すことを知っているかのように
彼は、私の話を聞こうとしてくれた
だから私もそれに答えなくては
今日でこの隠し事とサヨナラをする
…これで、彼との“隠し事”の関係ともバイバイ
嫌なくらいまとわりつくような暑さと
静寂に響く雨音が、
夏の日が落ちるのがのびた夕方を包み込んだ
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雅 - Aさん» Aさん、コメントありがとうございます。・・・好きな場面まで！ありがとうございます。感想を言って下さるのはとても嬉しいです。今後の参考にさせていただきますね。 (2020年11月26日 0時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、最後まで読んでくださりありがとうございました(*^^*) (2020年11月25日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - afterstoryもとっても素敵でした！！個人的に花言葉入ってるのがすごく好きできゅんってしました；； (2020年11月25日 12時) (レス) id: a957c976a9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - こちらこそ、素敵な作品を作って頂きありがとうございました！リクエストした宏太朗くんの話も素敵でした！２人の幸せが伝わる感じでした(^^) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、リクエストありがとうございました。おまけ話は完結させて頂きました。毎回コメントもありがとうございます。こちらの作品はこれで全て終わりとなりました。今まで読んでくださり大変ありがとうございました。 (2020年11月23日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年10月21日 22時
