第203話 ページ3
抱きついた彼女は、すぐさま俺の体を触り始める
『……怪我は！？痛いところは！？』
｢…ちょ、雫さん？！
だ、大丈夫、水かぶっただけだから！｣
雨音に負けないようにだいぶ大きな声で
言ったが、彼女は一切聞こえないようで
ほぼ錯乱状態でいた
『……血！血は…、骨は！？折れてない？
…じゃあ、あとあと…意識は？
……どうしよう、どうしよう！！』
最早パニック状態な彼女
｢雫さん！？落ち着いて、大丈夫だから！｣
『きゅ、救急車！！……スマホ！スマホは…』
どんどん濡れていく彼女と俺
｢雫さん？ちょ、よく見て、大丈夫だから｣
どんなに言い聞かせても、彼女には届かない
『……どうしよう！どうしよう！』
俺もどうしたらいいか分からなかった
こんな彼女を見るのは初めてだったから
それでも、全く視界に入らない彼女を
見て欲しくて、俺は落ち着かせるように
胸に彼女の顔を押し付け、抱きしめた
｢……大丈夫、大丈夫だから…｣
『……っ…』
震えている彼女
｢…大丈夫、いるよ、ここに居るから…ね？｣
ドクンドクンと流れる心臓の音をきいて
安心したのか、少しずつ目の光が戻ってきた
『…怪我は…ない、…ですか？』
｢うん、大丈夫、元気｣
俺の腕の中でゆっくりと顔をあげる彼女
背伸びをして
ぺちぺちと、両手で俺の顔に触れる
両手でしっかり頬を覆うと
『……だ…いじょうぶ…なん、です、ね？』
｢…うん｣
彼女の手の上にそっと重ねて握る
｢……大丈夫｣
すると、ふにゃふにゃと腰を抜かしたように
崩れ落ちた彼女 地面に座り込む
｢…っちょ！濡れるよ！｣
もうビシャビシャなのだが…
急いで傘を拾い、彼女と自分にさす
『………った…』
｢…ん？｣
『……よかった…』
『……よかったよぉ……』
そう、彼女はわんわん泣き出した
雨の水なのか、はたまた涙なのか……
｢……ごめん｣
『……心配…っ、したんだから…』
｢…ごめん｣
『…いなくなっちゃうかと思った……』
｢…ごめんね、大丈夫、大丈夫だから…｣
彼女を支える
そこで、俺はしまった、と気づく
蓋をしていたものを開いてしまったのだと
叩いてはいけないドアを叩いてしまったのだと
……また、彼女を泣かせてしまった
……また、彼女の元に雨を降らせてしまった
彼女の蓋をしていた、雨の日の過去
雨、事故寸前、そして俺
嫌なことに、キャストとストーリーは
完全に揃っていて
思い出すには充分だったのだから──
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 143人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅 - Aさん» Aさん、コメントありがとうございます。・・・好きな場面まで！ありがとうございます。感想を言って下さるのはとても嬉しいです。今後の参考にさせていただきますね。 (2020年11月26日 0時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、最後まで読んでくださりありがとうございました(*^^*) (2020年11月25日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - afterstoryもとっても素敵でした！！個人的に花言葉入ってるのがすごく好きできゅんってしました；； (2020年11月25日 12時) (レス) id: a957c976a9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - こちらこそ、素敵な作品を作って頂きありがとうございました！リクエストした宏太朗くんの話も素敵でした！２人の幸せが伝わる感じでした(^^) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、リクエストありがとうございました。おまけ話は完結させて頂きました。毎回コメントもありがとうございます。こちらの作品はこれで全て終わりとなりました。今まで読んでくださり大変ありがとうございました。 (2020年11月23日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雅 | 作成日時：2020年10月21日 22時
