第216話 ページ16
｢なんか飲み物持ってくるわ｣
『え、あっ！お構いなく！』
｢いーからいーから｣
…と、言っても家にいることが少ないから
冷蔵庫には大したものなんてないんだけど…
冷蔵庫からとりあえずお茶やら缶ビールやら…
持てる範囲で持って、コップも持って
腕で抱えながら再びリビングへ
｢お待たせ〜大したものないんだけ…ど｣
再びリビングへ行くと
カーテンの向こう側を見つめている彼女
僅かに開いたカーテンの隙間から
降り続く雨の雨音が零れて響き渡る
テレビとかも消していたから尚更雨音が響く
また…だ
また、あの顔
モヤモヤと雲がかかったように
胸がザワザワとする
すると、ハッと我に返ったように彼女は
俺に気がつくとにっこりと笑顔を返す
『すみません、お手数おかけして』
｢……｣
俺はテーブルの上に持ってきた飲み物と
コップを置くと、ソファーに座っている
彼女の隣に座った
｢…何考えてたの？｣
『え？』
｢また泣きそうな顔してた｣
『えっ…』
彼女の方をむく
｢…やっぱり俺じゃダメかな？｣
シーンと静まる部屋にベランダに打ちつける雨粒の音が響く
さらりと耳にかけていた彼女の栗毛色の髪の毛が落ちると、俺はそっとかけてあげた
数回瞬きした彼女は
とても落ち着いた声で『いいえ』
と返す
まさかの返答についつい
｢え？｣と聞き返してしまった
『…少しばかり思い出していて』
再び彼女は窓の方を見る
『…私ばかり幸せになってもいいんでしょうか』
“彼”はできなかったのに
そう言いたそうな彼女の横顔を見つめると胸がちくりと痛んだ
｢…それは…｣
そう言いかけた時、彼女は俺の言葉を遮り
『そう思ってしまうくらい…今が幸せなんです』
彼女は、俺の方を振り返ってそう言った
『怖いくらいに、今が幸せなんです』
とても優しい目で
俺が大好きな目で
雨音に負けないくらい透明で綺麗な声で
彼女は言った───
カチコチカチコチと、部屋の時計の音が響く
時計の針の音は聞こえるのに
しっかりと時間は進んでいるはずなのに
まるで今いる彼女との時間は
時間が止まっているような感覚になる
幸せだと言ってくれる彼女が愛おしくて
やっと彼女の瞳に映るのが自分なのが嬉しくて
それでもどこか儚くて消えそうな彼女を見るのが辛くて 衝動的に抱きしめたくなる
俺を見つめる彼女の手をとる
｢ねぇ、雫さん｣
｢雫さんの残りの誕生日、全部俺にちょーだい｣
｢…雫さんの全部、俺もらっていい？｣
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雅 - Aさん» Aさん、コメントありがとうございます。・・・好きな場面まで！ありがとうございます。感想を言って下さるのはとても嬉しいです。今後の参考にさせていただきますね。 (2020年11月26日 0時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、最後まで読んでくださりありがとうございました(*^^*) (2020年11月25日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - afterstoryもとっても素敵でした！！個人的に花言葉入ってるのがすごく好きできゅんってしました；； (2020年11月25日 12時) (レス) id: a957c976a9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - こちらこそ、素敵な作品を作って頂きありがとうございました！リクエストした宏太朗くんの話も素敵でした！２人の幸せが伝わる感じでした(^^) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、リクエストありがとうございました。おまけ話は完結させて頂きました。毎回コメントもありがとうございます。こちらの作品はこれで全て終わりとなりました。今まで読んでくださり大変ありがとうございました。 (2020年11月23日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年10月21日 22時
