第212話 ページ12
結局、お互いびしょ濡れだったから
健康ランドに行く前に買ってた服に着替えて
タクシーをよんだ
着替えたところで彼女の髪の毛は濡れていて
また、風邪をひいてしまうのではないかと
少しだけ心配になる
俺はと言うと、キャップを被ってたから
幾分かは彼女よりは髪は濡れていなかった
気がついたらもう辺りは夜だった
夏の日の長さで感覚がおかしくなってしまうが
実際はもう夕飯を食べてもいい時間
本当は彼女とディナーでも
なんて予定はいつの間にか急変更
そりゃ……こんなに濡れてしまった彼女を
連れ回すつもりはなかった
彼女の誕生日祝いも
もうすぐ終わりを迎えようとしていた
タクシーに乗り込むと、彼女の家までの住所を伝え、ぼーっと窓の外を見る
……俺は、なんにもしてあげれなかった
ふと振り返ってみれば
計画は全て変更されていて、
彼女を楽しませてあげれたかはよく分からない
なんなら、俺が彼女に助けて貰ってばかりいる気がする
片手で頬杖をついて窓の外を見ていると
空いていた手の方に柔らかい温もりを感じた
…ん？
ふと、手の方に目線をやると
彼女が恥ずかしがりながら
そっと指を絡めていた
小指と薬指だけそっと絡める
……いい歳こいて何してんだか
そんなこと思いながら、内心本当はドキドキ
彼女にこの心臓の音が
伝わらないことだけを願った
運転手が、彼女の家に着いたことを知らせる
『……江口さん、今日は楽しかったです。
ありがとうございました』
｢うん、こちらこそ｣
彼女はぺこりと頭を下げた
『では、また』
｢うん、また｣
車内にはふわりと香る金木犀の香り
彼女はロビーの自動ドアをくぐる前に
一瞬振り返って、手を小さく振る
そのまま彼女の後ろ姿は小さくなっていく
｢…｣
｢……すみません、運転手さん、ちょっと待っててもらっていいですか？｣
そう言って俺は、タクシーを降りると
彼女を追いかけた───────
エレベーターを待っていた彼女
…よかった、まだ居た
｢…雫さん！｣
『…え？あ、え？江口さん？』
『どうかしました…？』
｢……あのさ、｣
『はい』
｢…あの…さ｣
『…はい？忘れ物ですか？』
｢…いや、違くて。あの…｣
何とも上手く言えない
チンっ と言う音と共にエレベーターが来る
扉が開くと乗るか乗らないか悩んでいる彼女
俺はそっと開くボタンを押しながら
言うか言わまいか悩んだ結果
彼女の耳元で小さく言った
｢あの、さ、…今日俺ん家来る？｣
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雅 - Aさん» Aさん、コメントありがとうございます。・・・好きな場面まで！ありがとうございます。感想を言って下さるのはとても嬉しいです。今後の参考にさせていただきますね。 (2020年11月26日 0時) (
レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、最後まで読んでくださりありがとうございました(*^^*) (2020年11月25日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - afterstoryもとっても素敵でした！！個人的に花言葉入ってるのがすごく好きできゅんってしました；； (2020年11月25日 12時) (レス) id: a957c976a9 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - こちらこそ、素敵な作品を作って頂きありがとうございました！リクエストした宏太朗くんの話も素敵でした！２人の幸せが伝わる感じでした(^^) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、リクエストありがとうございました。おまけ話は完結させて頂きました。毎回コメントもありがとうございます。こちらの作品はこれで全て終わりとなりました。今まで読んでくださり大変ありがとうございました。 (2020年11月23日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2020年10月21日 22時
