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第191話 ページ41

「え、なになに、あらたまって」

『…目のクマ酷い』

そう言って俺の頬に彼女は手をのばす

『少しほっそりした気もするし、疲れてるでしょう?』
「え〜?そう?」
『…馬鹿だなぁ、そんなに無理しなくても良かったのに』

彼女の綺麗な瞳がゆっくりと優しく弧を描く
まるで壊れ物を触るかのように優しく触れる
彼女が触れたところが、不思議と疲れが吹き飛ぶ気がした

「全然平気、元気だよ」
『私はね?江口さん』
「うん?」
『…貴方と一緒に居れればそれで充分なのに』

…嗚呼、不思議だ
大きな水槽でゆっくり優雅に泳ぐ魚たち
そんな魚たちをぼーっと見つめているだけ
それだけなのにまるでこの時間までゆっくりになってしまった気がする

水に反射した光が彼女の瞳に映り込んで
キラキラ宝石みたいに輝いている

「……綺麗だね」

全く繋がっていない会話
それでもつい口から零れた それも自然に

一瞬不思議な顔をした彼女
そして、暫くして

『ええ、本当に。…本当に綺麗です』

そう言って、すごく優しい笑顔で笑った
久しぶりのこの笑顔 そんな笑顔を見ると
胸がまた締めつけられた

『こんな大きい水槽をみているとまるで人魚になったみたい』
小さい頃憧れだったなぁ〜なんて話す彼女

「へ〜マーメイド?」
『そう!やっぱりいつの時もお姫様に憧れちゃいますよね』

今だとおばちゃんが何言ってるんだって怒られちゃうかな って彼女は笑う

「どんな話だっけ?」
『え?人魚姫ですか?』

彼女はゆっくりあらすじを話し始める


……君が人魚姫なら
僕はみつけてあげられたのだろうか

彼女の話を聞きながらゆっくり記憶を思い出す

…小さい頃、絵本で読んだ人魚姫の話
王子様に恋をして、ヒレを脚に変えて
声を失って。それでも愛する人の隣に居ようとした話

もし、君が人魚姫なら
…君は泡になって消えてしまうのだろうか

ぎゅっと握っている片手に力が篭もる

『…江口さん?』

…いいや、違う

もし、“これ”が人魚姫の物語なら

君はきっとお姫様で、王子様と幸せに暮らして
……泡になって消えるのは僕かもしれない

『江口さん?』

心配そうに名前を呼ぶ彼女
その声だけで、心は喜ぶ

「…まぁ、そんなのは嫌だけど」
『え?』
「いいや、こっちの話」

ピンポンパンポーン
アナウンスが鳴る
先程よりは、人が増えてきた
アナウンスはイルカショーのご案内

『イルカショー!行きましょう!』
楽しそうに俺の手を引く
俺は、彼女に手を引かれていく

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設定タグ:江口拓也 , 声優   
作品ジャンル:恋愛
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- サチさん» サチさん、ありがとうございます。とりあえず第4章がいっぱいになりましたので、5章までいきそうです。長くなってしまいましたが、いつもコメントを下さりありがとうございます(*^^*) (2020年10月19日 23時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 読みます!読みます!ゆっくり更新でも大丈夫です!完結まで頑張って下さい。楽しみに毎回待っています(^^) (2020年10月19日 22時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
- サチさん» サチさん、ありがとうございます!(*^^*)はい!後半編です。また、作品自体終盤ですので、ゆっくり更新ですが読んでくださると嬉しいです(*^^*)本当にいつもコメントありがとうございます! (2020年10月19日 18時) (レス) id: ff32d91f5a (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 連投すみません。今回も沢山の更新だったので、嬉しかったです(^^)お疲れ様でした!誕生日も後半ですかね?この後どうなるのか楽しみです! (2020年10月18日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
サチ - ドキドキしましたが、流石です!そして、ほのぼのとした感じで良かったです!2人の会話の雰囲気?がとても好きです。 (2020年10月18日 0時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年9月19日 22時

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