雨音シンドローム IV

第187話 ページ37

そろそろ仕上がってきたな〜って時に
店のレトロなラジオから天気予報が聴こえた

“明日は日中はとてもいい天気で、まだまだ暑い夏の日差しが…”

｢明日晴れだって、マスタ〜！｣

｢良かったですね、絶好のデート日和ですね｣

｢……デート…｣

つい、デートという単語にニヤニヤしてしまう
そっかぁ…デートになるのか
そうだよな…デート…デートかぁ…


“しかし、梅雨前線により関東地域は突然の雨や雷などには注意して…”

｢……え！｣

｢あらあら…困りましたね。夜は天気が崩れるようです｣

嘘でしょお！？晴れてよ…こういう時くらい

なんだか上げて落とされた気分…
と思いつつ、また、
日頃自分が出ている側のラジオから
今日は反対の立場であることになんだか
不思議な感じになる

｢…あ〜した天気にな〜れ〜｣

ぼそっとほろ酔い気分になりながら呟いて
そろそろ帰ろうかな…と席を立ち会計をする

｢…頑張ってきてくださいね｣
｢ありがとうございます｣
｢是非、また飲みに来てください。場所あけときますよ｣
｢こちらこそ是非｣

チリリリーン

久しぶりに聞いたベルの音は
まるで応援してくれているかのように
俺の心の中によく響いた

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
家に帰ると、体力の限界を迎えたのかお酒が回ってきたのか…靴を脱いで直ぐに床に倒れ込む

｢……床気持ちい…｣

フローリングの床が暑い夏の夜とは反対にひんやりしていて気持ちが良かった

……ん？

ズボンのポッケが振動していることに気付き
誰からか連絡が来たことを知らせる

……こんな夜中に誰だ…

玄関に置いた、前に美術館で買った
お揃いの芳香剤から漂う金木犀の香りを
感じながらスマホをチェックする


｢……ん〜…｣

正直、今にも寝そうな勢いで画面が歪む

｢…あ、…ま、宮…雫！！｣

……雫さん！！

慌てて通知を確認すると

“お疲れ様です。お仕事は終わったでしょうか？……つい、明日だなと思うと楽しみで寝れなくて…。あ！でも、くれぐれも無理はなさらずに…。では、おやすみなさい。返信は不要です。”

なんとも雫さんらしいシンプルな内容だが…
所々に一々33歳の心がキュンとする

｢…つらっ、むり、好き……｣

手で顔をおさえて、じたばたする

1人だから何をボヤいてもまぁ別に…
なんて思いながら、胸の内をブツブツ呟きながらやっと重い腰を持ち上げリビングへ

…早く寝て、明日に備えよう

待ちに待った明日へと備えたのだった

第188話→←第186話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す