雨音シンドローム IV

第179話 ページ29

すっかり顔までタオルケットを被ってしまった彼女 鼻から上だけちょこんと出ている

｢え、なになに、どうしたの｣

『…近い…』

｢え｣

『……近いです……』

後半の方は消え入るような声で呟く

｢いや待って、そっちが来たんだけど…｣

『…え？』

｢それに今更〜？｣

『……でっ、でも、その恥ずかしいから…』

｢いやいやいや、今更でしょ〜？
何回目よ、一緒に寝るの｣

『…そ、そうだけど…』

｢そうだけど？｣

『……今すっぴんだし…』

え？今更？
スッピンでも綺麗だし、全く気にしてなかった
なんなら素がみれて別な意味で性癖に刺さるというか…グッとくるというか…
にしても、なんでまた今になって言う？

｢気にしたことないし、何回も見て…｣

『そ、そうだけど…！！…今は違うというか…』

｢なんでよ笑｣

『…だって』

｢だって？｣

『…好きな人の前では綺麗でいたいでしょう？』

照れたようにボソボソタオルケット越しに呟く
挙句にさらに深く被り、本当に頭から被ってしまった

｢……｣

｢……はぁ……｣

『…あ、呆れました…？』

｢あのさ｣

『……はい』

｢見せて｣

『やっ、やだ！』

｢いいから、見せて｣

思いっきり被っていたタオルケットを剥ぎ取る

『わーー！見ないで！…うぅ』

顔を手で急いで隠す彼女
手で覆えるくらい小さいんだな、って改めて思う

｢ねぇ｣
『やだ』
｢ねぇってば｣
『嫌だ〜！』

彼女の腕を掴み、無理やりこじ開ける

｢…やっと見てくれた、おはよ｣

『うぅ…江口さんの馬鹿〜馬鹿！』

｢酷いな、ちょっと｣

『大体ですね？江口さんが悪いんですよ？…顔面偏差値高すぎて…ごにょごにょ』

なんだかよく分からない事を言い出す

｢はぁ？何それ笑｣

『自覚無しとか…』

｢あのさ｣
『なんですか。あのっあんまり見ないでください…』
｢好き｣
『…はい！？』
｢好き｣
『…はっ』
口をパクパクして目を見開いてる
｢全部好きだから、気にしなくていいよ｣

そう伝えると、またまたタオルケットを被ってしまった

｢え〜…｣

『ずるい、江口さんずるすぎる…』

……女心というものは難しい

結局、俺が見ないという約束で手をうってくれた

数分後、俺もリビングへ向かうと
すっかり完璧に支度を済ませてる彼女

｢ねぇ、さっきのさ｣

『さっきの？』

｢俺、めっちゃ愛されてんね｣

『…あ』

｢いひひひ｣

思い出したのか、脱いだパジャマが飛んできた

｢ねぇ〜〜ちょっとぉ〜｣

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