第60話 ページ10
貴女side
『……っ！』
ずっとずっと待っていた人
…特別なお客様
「…あがっていい？」
『…梅原…さん』
ビニール傘が隠していたのは彼だった
肩を少しだけ濡らしながら、
片手には紙袋がひとつ
彼の荷物と彼が濡れてしまわぬよう
私は急いで声をかけた
『まっ、間に合います！大丈夫！入って！』
風邪ひいちゃう！
私は慌てて彼を店の中へ
『…たいへん！』
私は彼に駆け寄り持ってきたタオルで
彼を拭いた
「あ、お構いなく」
『でも…』
「今日は紬さんに拭かれるために
来たんじゃないんで」
触ってもらうのはまぁ、悪い気はしないけど
なんて、いつもみたいに冗談を彼は言う
『よかった…』
「なにが？」
『あ、いえ…』
もう来てくれないかと思った
そう言いかけた言葉を飲み込む
私は彼にレモンティーを渡すといつもみたいに
椅子を用意した
「…あ、今日は」
スっと挙げられた手
長居をしないから、お構いなく
そう言わんばかりの手
…そ、っ…か、
急にずーんっと言う言葉が合うくらい
私の心は沈んだ
『では…お花ですか？』
では、彼は何しに来たのだろう？
「いや」
『え？では…なにかお困り事でも？』
「それも違いますね」
『…じゃあ…？』
「…答え合わせ、しに来ました」
そう言われた言葉でドキリとした
答え合わせ────
それはあの夜出した
私の宿題について────
『…えっと…』
「月見草、あの花言葉は…」
どくりと心臓を掴まれような感覚になる
聞きたくないようで
聞きたい
そう思っている私の心────
「月見草…」
「月見草の花言葉は色々ありますけど…」
うつろな恋
ほのかな恋
移り気……
そう彼はゆっくりとまるで物語を聞かせるように喋り出す
「んで、もう一個────」
「無言の愛情────」
『……』
「…紡さんは、俺に“俺に贈るなら”
ってあの時言いましたけど、」
「…あれはどう言う意味だったんすか？」
真っ直ぐ彼に見つめられると
私はもう何も言えなくなってしまった
そう、月見草の花言葉
“無言の愛情”────
人知れず綺麗に咲いて
朝には散ってしまう月見草
そんな人目を避ける様子から
“片想い”を象徴する花言葉
貴女に贈るなら、月見草
あれは私の気持ちを込めて
人知れず咲く月見草と同じように
夏の僅かな恋をした貴方に
私からの小さな片想いの“言葉”────
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雅 - サチさん» サチさん、お久しぶりです。いつもありがとうございます。番外編も宜しければ(*^^*) (2021年12月3日 23時) (
レス) id: 62c9195d0c (このIDを非表示/違反報告)
サチ - お久しぶりです。西山さん、何やら新しい出会いですかね？楽しみです😊 (2021年12月1日 8時) (レス) @page17 id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。お久しぶりです。返信遅くなりすみません。こちらの作品も最後まで読んでくださりありがとうございます。また、何かの機会に読んでくだされば嬉しいです。いつも本当にありがとうございます。 (2021年9月24日 0時) (レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 完結おめでとうございます！タイミングがなく、なかなか読めていなくて、完結に焦りました！でも、すごく素敵でした！本当にほっこりするお話しをありがとうございました！ (2021年9月18日 1時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年8月11日 21時
