第59話 ページ9
貴女side
あれからどれくらい経ったのだろうか
梅原さんがお店に来ることは
一度もなかった
毎日、毎日
大好きなお花に囲まれて
私はお花という言葉の贈物を
生業として
そして気がつくと
彼の姿を探してた────
『…はぁ』
…引かれちゃったかな
看板を朝出しては
彼が来るのを待つ
そう、閉店ギリギリまで
もしかしたら、
「また今日も暇そうですね」なんて
いつもみたいに彼は言うんじゃないか
そう小さい期待をして
私は毎日店を開いた
ぽっかりと空いてしまった穴
その穴を夏の青空が埋めていく
…元に戻っただけ
そう、それだけなのに
色付いてしまった世界を知ってしまったから
…戻るなんて出来なくて
『……梅原さんに逢いたい』
そう呟いた声は寂しく消えていった
「あの、すみません」
…あ！
…彼かもしれない
『はーい』
…あ、違った
『いらっしゃいませ』
男性の声が聞こえる度
私は小さく期待する
…もう、会いには来てくれないのでしょうか
私の中に残る彼の声
少しずつ薄くなっていて
忘れてしまう前に…どうか
…貴方の声が聞きたい────
私は彼が“宿題”の
答え合わせに来るのを待ち続けた
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『…雨、か』
残暑真っ只中なとある日
天気は晴れではなく雨が降った
暑い日ばかりで植物には恵みの雨
そして私には…
『…今日も、来てくれないかな』
待っていない雨
散歩のついでに来てくれた彼
きっともうここには来ないのかもしれない
『…最後くらい、
お花買いに来てくれたっていいじゃない』
ぶつくさそんなことを呟きながら
花の手入れをした
日が沈んで
今日も来なかったな、なんて思いながら
看板をしまう
そして花を中にしまっていた時のこと
「……まだ、間に合いますか────」
『…え…』
閉店ギリギリ
いや、もう店を閉めようとした瞬間のこと
時刻もだいぶいい時間
そんな時間に
お客さんが一人
「…まだ、間に合いますか」
もう一回同じ言葉
声の振り返る方へ振り向くと
ビニール傘さした男性が一人
雨の中 店先に立ち尽くす
『すみません、今日はもう…』
男性に近付き声をかけた
ゆっくり顔を隠していたビニール傘が上を向く
ポツリ ポツリとビニール傘に雨があたって
音が響いた
『…えっ───』
ビニール傘から見えた顔
それは私が知っている人だった
それは私がずっとまってた人だった────
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雅 - サチさん» サチさん、お久しぶりです。いつもありがとうございます。番外編も宜しければ(*^^*) (2021年12月3日 23時) (
レス) id: 62c9195d0c (このIDを非表示/違反報告)
サチ - お久しぶりです。西山さん、何やら新しい出会いですかね？楽しみです😊 (2021年12月1日 8時) (レス) @page17 id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。お久しぶりです。返信遅くなりすみません。こちらの作品も最後まで読んでくださりありがとうございます。また、何かの機会に読んでくだされば嬉しいです。いつも本当にありがとうございます。 (2021年9月24日 0時) (レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 完結おめでとうございます！タイミングがなく、なかなか読めていなくて、完結に焦りました！でも、すごく素敵でした！本当にほっこりするお話しをありがとうございました！ (2021年9月18日 1時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雅 | 作成日時：2021年8月11日 21時
