第57話 ページ7
あれからしばらくして
蒸し暑い日
また晴天が俺を睨みつけた
…あつ
ジリジリと太陽が肌をさす
「梅ちゃん、梅ちゃんってば」
「…あ？」
「もー大丈夫？体調悪い？」
「あ、わりぃ、気が付かなかった」
「えー、昼何食べに行くって
僕いったんだけど」
そう隣にいた西山が声をかけた
「…蕎麦」
こんな暑い日は軽く楽に食べたい
「いいね！蕎麦！僕オススメあるよ！」
もうなんでもいい、西山に任せよ
「…あ！そういえばさ」
適当に西山の後をついて歩いていると
思い出したかのように彼は話し始めた
「ブーケ、どうなったの？」
「……枯れた」
「あー、やっぱ枯れちゃったか〜」
切り花にしてはよくもったよね〜
なんて話しながら
そっと俺は花のことを思い浮かべた
…そう、枯れた
丁寧に育てたけど、枯れてしまったのだ
…なんだか少し
…少しだけ
…寂しい
ぽっかりと空いた穴
それと同時に花が枯れたことにより
月日が経ったと実感する
…だいぶ行ってねえーな
あの日以来
一度もいっていない花屋
「ここ、ここ！おすすめの蕎麦屋！」
西山の声で我に返る
そして、蕎麦屋に入っていった
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あー、明日寒いね」
「え、まじで？」
「うん、長袖がいいかもね」
8月も半ば
気がつけば立秋
もうすぐ秋だ
「…そっか、」
「涼しくなるのはいいけど、秋って寂しくなるよね〜」
「んー、何となくわかる」
「食欲の秋、読書の秋…梅ちゃんは？」
「え？」
「梅ちゃんはなんの秋？」
俺は…
「…花…」
小さく呟いた
なぜか、秋に咲く秋桜が頭をよぎる
…秋もきっと彼女は────
「じゃあ梅ちゃんは、植物の秋だ！」
「…ん？」
小さく呟いた声を西山はひろう
ほんと、聞かなくていいことばかり
聞こえるんだから
「…読書の秋かな」
「えー今植物って言ったばっかりじゃん」
「西山さんは？」
「うーん、食欲かな！やっぱり！
僕は花より団子なんで」
おいもが美味しい季節だよ、って付け加える
…読書の秋、か
…読んでないな
夏はもうすぐ最後
それなのに俺は
未だに残る夏の宿題────
開かずじまいの花言葉の本
最後だから…
そう思い帰ったら開こうと決意する
「…あ、ツバメ」
「ほんとだー！可愛いー」
燕が低く飛んでいた
…雨、降るのか
夏最後の雨か
はたまた秋雨か
俺はぼーっと低く飛ぶ燕を見つめた
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「梅原裕一郎」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雅 - サチさん» サチさん、お久しぶりです。いつもありがとうございます。番外編も宜しければ(*^^*) (2021年12月3日 23時) (
レス) id: 62c9195d0c (このIDを非表示/違反報告)
サチ - お久しぶりです。西山さん、何やら新しい出会いですかね？楽しみです😊 (2021年12月1日 8時) (レス) @page17 id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
雅 - サチさん» サチさん、いつもコメントありがとうございます。お久しぶりです。返信遅くなりすみません。こちらの作品も最後まで読んでくださりありがとうございます。また、何かの機会に読んでくだされば嬉しいです。いつも本当にありがとうございます。 (2021年9月24日 0時) (レス) id: 6254493976 (このIDを非表示/違反報告)
サチ - 完結おめでとうございます！タイミングがなく、なかなか読めていなくて、完結に焦りました！でも、すごく素敵でした！本当にほっこりするお話しをありがとうございました！ (2021年9月18日 1時) (レス) id: 379e7fdd5e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雅 | 作成日時：2021年8月11日 21時
