暗殺記録、ゼロ【暗殺教室×名探偵コナン】

第13話 ページ14

烏間さんの顔を私のナイフがシュッと掠める。
余裕綽々といった様子だ。
本当に格の違いを思い知らされる。

当たり前だが、私は降谷にも訓練で勝ったことはない。
筆記は私が上位。実技は降谷が上位。
警察学校での成績は、ずっと平行線だった。

烏間さんから飛んできた鋭い蹴りをすんでのところで避け、喉元めがけてナイフを振り下ろす。
今度は避けることなく、ガシッと腕を掴まれた。

力の押し合いになった時点で勝ち目はない。
女は男に力で負ける分、戦略的に勝つしかない。
いかにして相手の攻撃を見切って、自分の攻撃を当てるか。

烏間さんの腕を振り払い、後へ下がる。

すぐに左からミドルキックが飛んでくる。
右に避けてそのまま回転、後ろ蹴り。
目の前に差し出されたナイフを受け流して、ハイキック。
しゃがんでハイキックを避けた烏間さんが出した足に引っかかった。
バランスを崩したところへ、再びナイフ。


「……っ！」


喉元を掠める。
今のが本当のナイフで、あと数ミリだけズレていたら。
それこそ、お陀仏だった。

背中を伝う冷や汗が、自分が危なかったことを知らせてくれる。
いくら死なないナイフといえど、烏間さんの手にかかったら一発で逝ってしまう気がする。

ただ、烏間さんも外すと思っていなかったようだ。
一瞬だけ眉がぴくりと動く。
その瞬間に、ナイフとともに突き出された彼の手首を掴む。
烏間さんの顔に焦りの色が浮かぶ。
そのまま手首を返して小手返し。

烏間さんも対応に間に合わなかったらしく、技はサラッと決まった。
そのままナイフで切りつけるが、ガシッと腕を掴まれてしまう。


「しまったッ！」

「俺の勝ちだな」


ナイフを弾かれ、烏間さんのナイフが私の胸にトン、と当たった。


「すっげー！」


一気に周囲が騒がしくなる。

ああ、生徒達が見ていたんだっけ。
すっかり忘れてしまっていた。


「柚希先生、すばらしいお手本をありがとうございます！烏間先生にあれほど引けを取らずに闘えるとは！」

「殺せんせーまで見てたんですか……」


いつからいたのだろうか、最初はいなかったはずのタコまで私たちの戦闘を見ていたようだ。


「でも、暗殺には基本的に戦闘は必要ないですからね……今の、お手本になりましたか？」

「とんでもない！優れた暗殺者は、なんでもそつなくこなすものです。十分なお手本ですよ」


再び顔に大きな丸を描くタコ。
ターゲットに褒められるのもおかしなものだが、悪い気はしなかった。

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