episode47 ページ50
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「神童。」
「三国さん。」
フィールドの上で動かない神童に声をかける。まさか化身を使用したことで何かあったのではないかとの心配も浮かんだが、全くの杞憂だった。
勝利を噛み締めながら、空を見上げていた。
「勝てたな。それにお前も…化身を使いこなせたじゃないか。」
化身を自分のものにした神童を祝福する。
敵が持っていれば恐ろしいものも、仲間となればこんなにも頼もしい。
「三国さんが止めてくれたおかげです！本当にありがとうございます！」
「やっぱり、勝利の女神の前で情けないプレーはできないからな。」
礼を言う神童に対し、そう述べる。何のことだか分からない、というような顔で神童は三国を見つめ返した。
その視線の疑問には答えず、ただひたすらに喜ぶ後輩たちに目を向ける。
「それに、後輩の前でも。」
自分がサッカーに誠実に向き合おうと思えたのは、松風のおかげだ。
そして、ひたむきにプレーをする、神童含めた後輩の皆のおかげだ。
「不思議な奴だな。アイツは。」
松風を見つめながらそう呟く。
心のモヤモヤを全て吹き飛ばして、人を自由に飛び立たせてくれる。
まるでーー
「はい。まるで、そよかぜみたいな奴ですね。」
「…だな。」
共に松風に心を動かされたもの同士、考えていることは同じだった。
ーーアイツとなら、この腐敗したサッカー界も変えられるような気がする。
「そうだ、そういえば神童は七海が必殺技を使えること知っていたのか？」
聞こうと思っていたことを尋ねる。あの反応からして同輩達は使えることを知らないようだったから。
当然、三国自身も知らない。
「あ、はい。といっても本人から言われたわけではなく、自分で調べて…。
俺、アイツらと一緒に練習はしてなかったんです。
…この試合の直前まで、悩んでいたんです。自分はどうしようかと。」
神童は少し下を向いてそう言った。
それでも、悩んでいてもなおキャプテンとして、司令塔としてチームメイトのことを知っておこうとしたのだろう。
三国達3年生は、もし来年自由なサッカーができるようになった時のために、と神童にキャプテンを託した。
その選択は正しかったと、心の底から思う。
「そうか。…いいシュートだったな。」
「はい。字で見るよりも、ずっと。」
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作者名：成瀬ひかり | 作成日時：2020年9月14日 14時
