episode41 どうすれば ページ44
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控室から出てフィールドに向かったはいいが、足を踏み入れずに手前で佇んだまま。
一瞬、自分がここに足を踏み入れる資格があるのか考えてしまったのだ。
ーー母さん…俺は、
俺は何をやっているんだ。
松風、神童、西園、大空、皆はそれぞれ真剣にサッカーと向き合っている。
いや、三国自身も今までずっとサッカーに向き合っていたつもりだ。
サッカーを続けたいから、サッカーが好きだからこそフィフスセクターに従うと決めた。
けれど松風達が入部して、円堂監督がやってきて。
神童があの大きな組織に立ち向かうと決めて、"勝つためのサッカー"を目の当たりにして。
三国がしていたそれは、自分にも他人にも嘘をつく全く誠実さが無い向き合い方だと突きつけられた。
サッカーをするために、サッカープレイヤーであることを捨てていた。
それに気付いてもなお、一歩を踏み出す勇気も出ない。
そんな人間がここに足を踏み入れていいのか。
サッカーをする気がない、人間がーー
「三国先輩！どうしたんですか？」
卒前後ろから声をかけられた。松風だ。
西園と大空もいる。
フィールドに出ずに立ち止まったままの自分を見て、何かあったのかと心配そうな表情をしている。
「先輩、もしかしてさっきの化身シュートでどこか痛めたとか…」
「えぇ！大丈夫ですか⁉」
「いや、違う。怪我じゃあない。ただ…昔を思い出してな。」
今からでも勝つ気が満々な彼らに、入っていいものかと悩んでいた、とは言えず適当な言い訳を絞り出した。
「昔？」
「ああ。さ、入るぞ。もう少ししたら試合も始まる。」
3人をフィールドへと促す。三国も共に人工芝を踏んだ。
あれだけ留まろうとしていた身体は、驚くほど素直に動いた。
「あの…三国先輩は後半どうするんですか？」
遠慮がちにそう尋ねてきたのは大空だ。
それでも目は真っ直ぐにこちらを見ている。
どうする、といっても実質選択肢は2つの質問だ。
それでもすぐさま答えることはできなかった。
ーーどうしたらいい？
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作者名：成瀬ひかり | 作成日時：2020年9月14日 14時
