episode23 じっとなんて ページ26
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「ドリブル、ドリブル…で、パス！」
三国の家を出たときには、辺りは暗くなりつつあった。
が、今は体を動かさずにいられない。三国のアドバイスを実行するべく、松風は河川敷で1人ボールを蹴っていた。
「うーん、だめか…」
パスを出す相手がいないため缶を人に見立てているが、なかなか正確にいかない。
しかし、できるようになるための練習だ。この程度のことではへこたれない。
「よし、もう一回だ！」
「お、いたいた！」
「おーい、天馬！！」
名を呼ばれ振り返ると、ジャージ姿の信助と七海がいた。つい笑顔がこぼれる。
「信助！七海！」
「やっぱりここにいたんだ！家に帰ったけどじっとしてられなくてさ！だって、夢だったんだよ⁉ホーリーロード！！だんだん興奮してきて！！
それで練習しようと外出たら、さっきそこで七海と会ったんだ！」
「考えてることはやっぱ同じか。憧れの舞台に立てるのに、家でぼーっとしちゃいられないよな。」
2人も互いの顔を見て笑う。嬉しそうに、楽しそうに。
「だから精一杯やりたいんだ。…負けるって決まってても！」
信助の言葉に七海も力強くうなずく。2人の表情に迷いはない。
「負けないよ。俺たちは絶対に負けない。」
松風もまた意思を露わにする。最初からずっと、この気持ちは変わらない。
「うん。負けるつもりで試合したって、楽しくないもんね！」
「試合に負けないのはもちろん、フィフスセクターにだって負ける気はねえよ！」
目標は3人とも同じだ。負けないこと、勝つこと。それだけ。
そのためにできることは、練習しかない。
それが分かっているから皆、こうして会うことができたのだろう。
再び意思を固め、練習に取りかかった。
「2人とも、パスの練習しよう！」
「おーっ！」
「おう！」
「じゃあ、僕はここで！」
結局、闇夜とも言える時間帯まで練習をしていた。主にパス練習だったが、ドリブルやブロックもお互い教え合いつつ練習した。
「バイバイ、信助！」
「気を付けろよ、もうすっかり暗いから。」
「うん、また明日！」
松風と七海の家はわりと近いらしい。信助と別れてからは、2人で歩く。
「な、そういえばさ。何で松風君は、フィフスセクターに立ち向かおうって思ったの？」
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作者名：成瀬ひかり | 作成日時：2020年9月14日 14時
