我が身をつねって【冨岡義勇】

玖 ページ9

「それで、君たちは恋仲なのかい？」

「は？」



鴉(からす)を使って呼び出され、到着早々鍛錬に付き合わされ、終わったかと思えばこう投げかける彼に、私は素っ頓狂な答えを返す。





「煉獄さん、よく見開いたその目(まなこ)でなにが見えていらっしゃるのですか？」

「最近、Aくんは冨岡をよく構うし、冨岡もAくんに対してはよく話しているように思ってね！」




私の嫌味は華麗にスルーされ、炎柱こと煉獄杏寿郎はその特徴的な目……いや、笑顔をこちらに向けてきた。




「煉獄さんの勘違いです。蜜璃は置いておくとして、恋愛してる暇なんて私達、鬼殺隊員にはないのでは？」

「そんなことはないと思うぞ！現に結婚している隊員もいるではないか！」

「あれはちょっと違うと思うのですが……いえ、結婚していることに変わりはないですね」




くノ一の女性を3人も嫁にしているある男を思い出す。
いや、正妻は1人で、2人は妾(めかけ)になるのだろうか？だが、3人とも嫁だと彼は言っていたな…。





「第一、恋愛というものはどういうものなのでしょうね？なにをもって相手を想っていると確信するのでしょうか？」

「キュンってしてキュンてなるの！」




煉獄とは思えない高い声と台詞に驚き、声のした方向に勢いよく振り返る。





「蜜璃…いつからいたの…」

「恋仲なのかい？ってところから」



最初からではないか。
どこにいたんだ、この子は。




「それで、Aちゃんは冨岡さんにキュンってするの？」




彼が私と話をするのを楽しいと言ったときのことを思い出す。


彼はその言葉と共に微笑んだ。





「胸が苦しくなったことは……………。ハっ！」


自身が口走った言葉に、焦って蜜璃の方を見る。だが時すでに遅し、蜜璃が顔を火照(ほて)らせて、両手で口元を覆っている。

蜜璃とは反対に顔を向けると、これまた笑顔の煉獄さん。





「違う！違うから！絶対に違う！…煉獄さん、鍛錬ありがとうございました。私はこれにて失礼致します」

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