参拾玖 ページ39
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なにかを失っても、私達は進み続けるしかない。
鬼殺隊にいるということは、そういうことだ。
でも一つだけ確かなことがある。
彼の死は、若い芽に確実に大きなものを
「Aちゃん」
「どうしました、鯉夏花魁」
「帯をまた、頼める?」
「もちろんです」
私は宇随の妻が潜入しているという吉原に来ていた。
なんでも上弦の鬼が潜んでいるのはほぼ確実で、満を持して迎え撃つために、私自身も潜入することにした。
これ以上の犠牲を出さないためにも。
「ごめんね、芸者のAちゃんにこんなこと頼んで」
「構いません、この前の帯の結び、気に入りました?」
「ええ!見よう見まねでやってみたけれど、上手くできなくて…」
「ふふ…お教え致しますよ」
『ときと屋』に潜入したのはいいものの、宇随の妻には会えていない。
私が潜入した時には既に足抜けしたと遊女たちは噂していて、密かに情報を探るもなにも掴めないでいた。
「鯉夏花魁、身請けが決まったって聞きました」
「相変わらずAちゃんは、情報が早いのね」
私は鯉夏花魁の帯をいじりながら語りかける。
なにか一つでも情報が欲しい。
「そういえば、昨日…京極屋の女将さんが……」
「Aちゃん、悲しい話はやめましょう」
鯉夏の顔を見上げれば本当に憂いに満ちた顔をしていて、
「ごめんなさい…、出来ましたよ」
「わあ!本当に可愛い」
「花のような鯉夏花魁に蝶が止まってるみたいですね」
その言葉に鯉夏花魁は照れたように綺麗に笑った。
「Aちゃん、今日も舞を踊るの?」
「今日は三味線です」
「あら、残念。Aちゃんの舞は綺麗なのに」
「他の花魁から私に舞を躍らせるなと
「きっとお客さんがAちゃんのことを見てしまうから、花魁としては悔しいのよ」
鯉夏はとても楽しそうに笑う。
私もつられて笑う。
早く、鬼をなんとかしなければ、この笑顔を絶やすことだけは絶対にあってはならない。
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太夫 = 花魁の中でも最も位の高い遊女
楼主 = 遊郭のオーナー
芸者 = 踊りや楽器などで接待する人達
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もちごめ(プロフ) - とても面白いです!1つ気になったのが、煉獄さんは柱の人たちを呼び捨てで呼んでいます。胡蝶、宇髄のような感じです。口調も「〜だね、〜かい?」ではなく「〜だな!〜だろう!」と言ったように喋ります。口出し失礼致しました…!! (2020年11月21日 9時) (レス) id: 2c19e184ee (このIDを非表示/違反報告)
rina214skt2(プロフ) - メリアさん» コメントありがとうございます。煉獄さんの人の呼称が迷走してしまい申し訳ありませんm(_ _)m順次修正させていただきますのでお待ちくださいませ。楽しみにしていただけて嬉しいです!頑張ります! (2019年8月24日 13時) (レス) id: 74af5ac913 (このIDを非表示/違反報告)
メリア - 口出しすみません!煉獄さんは(名前)少女/少年と呼ぶと思います。冨岡、と呼んでいます。本当にすみません!いつも楽しみにしてます! (2019年8月24日 12時) (レス) id: 25b2169fce (このIDを非表示/違反報告)
rina214skt2(プロフ) - 蜜柑さん» それが実は私にもわかりません!頑張ります!ありがとうございます^ ^ (2019年8月20日 20時) (レス) id: 74af5ac913 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - いやぁーどうなっちゃうんでしょうね?これからがすごく楽しみです!更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: aebba032ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あめ | 作成日時:2019年8月18日 9時