参拾参 ページ33
「到着しました」
そう言われて、目隠しと耳栓を取られれば、刀鍛冶の里だ。
毎回この目隠し・耳栓・おんぶの工程はめんどくさいと思うが、里を隠すためだから致し方ない。
「ありがとうございます」
私を背負ってくれた最後の隠の者に礼を言うと、迷わず自身の刀を取りに向かった。
私はよく刀の手入れを怠り怒られる。
今回も刃が
「
「来たか、ほら」
私の日輪刀をいつも研いでくれる鋼鐡塚蛍さんは、私に鞘に収まった日輪刀を差し出した。
ひょっとこのお面はトレードマークではあるものの、鋼鐡塚蛍に関しては、かなり整った顔立ちをしているのでいささか残念だ。
「いつもながら丁寧に研いでくださって、ありがとうございます」
鞘から半分ほど抜いて、その刀身に自身の顔が反射して映るのを目を細めて見つめる。
「当たり前だ。お前、かなりの数の鬼を切ってるな…?」
鋼鐡塚さんはひょっとこのお面を上に上げて素顔を見せる。
「すごいですね、刃の状態でわかるのですか?」
抜いていた刀を鞘にゆっくり収めるとキンと刀独特の響きが耳に響いた。
「先代から頼まれてんだ、お前は
私は何も答えなかった。
黙って刀を腰に携える。
「鋼鐡塚さん、またお願いしますね」
鋼鐡塚さんに礼をすると私はすぐに踵を返す。
私は他の人のように強くないから、斬って斬って斬るしかできないから…。
「Aくん!」
温泉にでも入ろうと向かっていると、後ろから声をかけられる。
「煉獄さん」
振り返れば煉獄が片手を上げてこちらに歩いてきている。
薄い浴衣を着ているところから、刀鍛冶の里に滞在している、もしくは滞在する予定なのだろう。
「冨岡も一緒かい?」
「どうして冨岡さんが出てくるんですか」
「だって恋仲なのだろう」
前に恋仲なのかと訪ねられた時とは違い、今回は確信を含んだ言い方に、私は無言で肯定することしかできなかった。
「うん!信頼を置ける相手がいるのはいいことだ!」
その言葉とは裏腹に、煉獄からは悲しい"感じ"がする。
「私は、煉獄さんのこともとても信頼してますよ」
「ハハ!それは光栄だ!」
これが、煉獄杏寿郎と交わした、最後の会話だった。
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もちごめ(プロフ) - とても面白いです!1つ気になったのが、煉獄さんは柱の人たちを呼び捨てで呼んでいます。胡蝶、宇髄のような感じです。口調も「〜だね、〜かい?」ではなく「〜だな!〜だろう!」と言ったように喋ります。口出し失礼致しました…!! (2020年11月21日 9時) (レス) id: 2c19e184ee (このIDを非表示/違反報告)
rina214skt2(プロフ) - メリアさん» コメントありがとうございます。煉獄さんの人の呼称が迷走してしまい申し訳ありませんm(_ _)m順次修正させていただきますのでお待ちくださいませ。楽しみにしていただけて嬉しいです!頑張ります! (2019年8月24日 13時) (レス) id: 74af5ac913 (このIDを非表示/違反報告)
メリア - 口出しすみません!煉獄さんは(名前)少女/少年と呼ぶと思います。冨岡、と呼んでいます。本当にすみません!いつも楽しみにしてます! (2019年8月24日 12時) (レス) id: 25b2169fce (このIDを非表示/違反報告)
rina214skt2(プロフ) - 蜜柑さん» それが実は私にもわかりません!頑張ります!ありがとうございます^ ^ (2019年8月20日 20時) (レス) id: 74af5ac913 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - いやぁーどうなっちゃうんでしょうね?これからがすごく楽しみです!更新頑張ってください! (2019年8月20日 16時) (レス) id: aebba032ed (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あめ | 作成日時:2019年8月18日 9時