我が身をつねって【冨岡義勇】

弍拾参 ページ23

物音で目が醒める。
物音ではなく、横で眠る冨岡義勇の声だった。



「錆…兎……姉さん…」



彼は眠りながら涙を流している。
眠りながらでも彼からは自責の念をひしひしと"感じ"る。

彼がゆっくりと天井に向かい右手を掲げはじめる。
その手を私は迷うことなく握る。



ビクっと身体を一度揺らした冨岡義勇は、涙に濡れた瞼を一気に開いた。




「義勇さん…、大丈夫です…大丈夫」



その言葉に冨岡は見開いていた目をゆっくりと閉じ、身体を反転させ私の方に身を寄せる。

彼の少し硬い髪を繋いだ手とは反対の手で撫でていると、彼は再び規則正しく寝息を立てて安らかに眠り始めた。




「貴方はまだ、ご自分が許せないのですね…」




日が昇り始めた頃に冨岡と会い、互いに疲れが出て再開も早々に眠りについたのだが、今夜、お館様に呼ばれている。どうやら冨岡も同様に呼ばれているらしい。

少しだけ開けた雨戸の隙間からは、既に夕日が差し込んでいた。




繋いだ手をゆっくり静かに離す。
寝巻きである白い着物を脱ぎ捨てると、隊服に袖を通し、髪を結い上げる。



「…A…」


掠れた声で名を呼ばれる。



「おはようございます、義勇さん。もう夕刻です、お館様のお呼びまでに、食事に行きませんか？」


何日も留守にしていたお陰で食材は一切ない。




「ああ…。……悪い夢を見ていた気がする…。」

「それは夢です」

「……そうだな…」



義勇は身体を起こし目を擦る。
私のことなど御構い無しで、着ていたものを脱ぎ捨てて隊服に袖を通すと、その上に半々羽織を着る。


目をそらしていた私に近づくと、またもや横から抱き寄せる。
冨岡は自身が想像していた以上にスキンシップが多いと最近実感している。




「俺は夢の中でも、お前に手を引かれていた…」

「ふふ…当たり前です。私は貴方のお側にいつでもおりますから」



冨岡の腕をギュッと掴み、微笑んで見せる。
冨岡の端正な顔がゆっくりと近づく。



「愛している」




重なった唇は、少しだけカサついて、とても温かかった。









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大正コソコソ噂噺

(義勇さんも、Aさんも、お互いの家にお互いの寝巻きを数着ずつ置いているらしいよ！)

(炭治郎…それはもしかして大人の……いいい"い"い"やぁあ"あ"あ")
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