我が身をつねって【冨岡義勇】

拾肆 ページ14

「しのぶさん！言わないでくださいと申し上げましたよね？！」




柱が顔を揃える中、私は胡蝶しのぶに怒声とも取れる声を投げかける。
今日は柱合会議、半年に一度の会議。



問題は私がここに到着した時に遡る。




「やぁ、Aくん！君は冨岡を見ると動悸がしてしまう病気なんだって？！大丈夫かい！」

「煉獄…さん…？」


「よオ！俺も聞いたぜ、派手に失神(しっしん)するって？！」

「宇随さん…？」


「おもしれぇことになってんなぁ」

「不死川(しなずがわ)さん…？」


「病気なんて…可哀想に…南無阿弥陀仏…」



ふと上を見上げる、そこには木の上で半ば寝そべる状態になった蛇柱の伊黒の姿。
なにか物言いたげにこちらを見ている。



「待って…ください。なにも言わないで！」


私は頭を抱えた。あの天使のような悪魔が、タダお願いしただけで黙ってくれているという保証はないにしても、それにしてもなぜこんなにも広まっているのか…。



(頭抱えて悩んでるAちゃん…カワイイ…！)



ボーッと空を見上げる時透無一郎が本当の天使に見えた。

少し遅れて胡蝶しのぶが到着して、冒頭に至ると言うわけなのだが…。




「私は、善処すると言っただけで、お約束をした覚えはありません」

「そ、それでも皆さんに風聴するだなんて！」

「あら？私はお二方程にしかお話ししてませんが」



確かに不死川あたりに言われたことは、いきすぎていた。冨岡を見ただけで失神などしない。
大方、又聞きで大きくなっていったと言うところなのだろう。




「そんなことよりAさん」

「はい…(そんなことより？！)」

「後ろは大丈夫ですか？」

「後ろ…？」



振り返る。
そこには、煉獄、宇随、不死川、悲鳴嶼(ひめじま)、伊黒、甘露寺が哀れんだような馬鹿にしたような、悲しんだような、いろんな顔をした柱たちがこちらを見ていて、少し離れて時透が空を見上げている。



「違います、私の後ろです」

「しのぶさんの後ろ…？…………？！？！？！」




冨岡義勇が、無表情で立っていた。


私は駆け足で時透のところまで行き、みんなから隠れる。
時透の後ろからチラリと様子を伺うと、冨岡義勇は訝(いぶか)しそうにこちらを見ていて、他の柱は全員先程のような哀れんだような好奇心のような目を向けている。





「もう！時透くん以外、皆さん嫌いです！」

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