我が身をつねって【冨岡義勇】

弍拾捌 ページ28

竃門くんはどうやら鬼舞辻に遭遇したことがあるらしく、鬼舞辻は竃門くんを追っているらしい。

今まで千年近く、ヤツが全く出さなかった尻尾に柱たちは興奮を見せる。




「私は初めて鬼舞辻が見せた尻尾を掴んで離したくないんだ。
恐らく禰豆子にも鬼舞辻にとって予想外の何か(・・・・・・)が起きているのだと思うんだ。
わかってくれるかな？」




誰もが沈黙し、お館様の言葉に頷きかけた時。



「わかりませんお館様！人間ならば生かしておいてもいいが鬼は駄目です、承知できない！」



その言葉と共に不死川は再び日輪刀を抜き、三度箱に突き立てた。


「！！！やめろォオ！！」


竃門くんが叫び出す。
不死川が、刀で自らの腕を傷つけようとする。


ガッ



私は素手で不死川の刀の柄(つか)に近い部分を握りしめる。



「いい……私がやります。不死川さんは手を出さないでください」

「ああ"？！引っ込んでろ！！」

「…誰に口聞いてる。不死川実弥。冷静さを欠いたお前には任せない。引っ込むのはお前だ」




私の言葉に不死川は怯(ひる)む。
私はお前よりずっと昔からここに身を置いているんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)。
口答えはさせない。





私は不死川の日輪刀を握る力を強くして、歩きながら、手のひらから手首までを刀身の根元から先まで滑らせた。

同時に箱の紐をもつ。ドバドバと溢れ出る血に、他の柱たちは動揺を見せる。




竃門くんはそこでハッとする。


「やめてください！！Aさん！！」

「お館様、失礼いたします」

「Aさん！！！」


竃門くんは私を追いかけようとして、伊黒に取り押さえられる。
私は草鞋(わらじ)を脱ぎ、脱いだ瞬間にお館様の奥の座敷まで跳ぶ。




「禰豆子…出ておいで。私達に、証明しておくれ……あなたが、人を喰わない鬼だってことを…」



箱の扉をゆっくりと開ける。

尚も溢れ出る血が、箱の扉に滴り落ち、開けた際に禰豆子の顔にも滴り落ちた。



禰豆子は竹の猿轡(さるぐつわ)から唾液を溢れさせ、フゥーフゥーと唸るような息を吐き出している。



(ダメよ、禰豆子。耐えなさい。あなたが耐えないと…耐えないと、あなたのために命を落とす人がいるのよ…)



禰豆子がゆっくりと私に近づく。
冨岡により解放された炭治郎が声を上げる。



「禰豆子！！」



その瞬間、禰豆子は私からプイと視線を逸らした。

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